第23話 覚醒者憚る
ようやく辿り着いた例の女司令官ことリュシオ。
後は脱出するだけだが、最後の砦が立ちはだかる。
外は猛吹雪なので地下のカメラだけを確認して迎え撃つのは、
物好きだけ…魔国の勇士の1人が最後に立ちはだかった。
ストルムは潜入時とは真逆のスタイルで、
脱出を図る。周囲確認に余念が無く、不安を感じたなら
足元や匂い、ターゲットの身体にも気が回る。
「緊張してるの?」
「当たり前だろ。さっき上司から説教くらったばっかだぜ」
走り抜ける足元には気絶した魔国兵士が散らばってる。
ストルムの素性に思わずゾッとするリュシオだが、
ある意味信用に値する人間ではあると判断できる。
「さっきのポテトって備品?」
「そうよ」
「ふーん、ならなんで隠し味なんてあんの?」
こいつ、できる。
リュシオは警戒心を解く事をやめる。
悠久潜在能力を見抜かれてしまったのだろうか?
そもそも上層部は何を考えている?
疑念は自らの知能の高さに応えるように思考を繋いでいく。
リュシオは収監された後に、備品の電話から
上層部の指示を受け取っていた。
状況を説明された後は一方的にガチャっと切られ、
意思疎通もクソもないなんてボヤいていたけれど、
ストルムの感の鋭さや切り替えの速さに対して、
そう言うヤツと共闘していくのか飲み込む。
一方の司令室ではワープポイントを使って戻ってきた
ディアードが状況を確認している。
迂回のルートは少し複雑にしておいて
なるべく人の目につきやすい物を選択。
ストルムにデータを送って監視を再開する。
「え?だいぶ距離がありますよ?」
「良いんだ。このルートとこのスーパー。
要素は整った。後はストルムが気づくかだな…」
マップを受け取ったストルムは再び走り出した。
彼女の装備は武装品に至って特に無し。
見た目は白衣と断定。通信機器は当然没収されていて
無いはずなので裏切られる要素もない。
あとは出口に向かって迅速に足を進めるだけ…
だがそんなに上手くいかなかった。
ストルムは殺気を感じ取った。
急ブレーキで足を止め、回路を点ける。
「おーおーおー、
流石は世界一の戦争屋…オレにビビるなんて。
あんた良いセンスしてるよ」
細心の注意も虚しく勘付かれた。
気づかれるような物は数十分前の撃滅以外に無い。
今更怖気つくようなことは…
「大体囚人を閉じ込める施設を
めちゃめちゃにしたのがいけねえんだわ。
おかげで手間がかかるのなんの」
「自己紹介がヘタクソなのはいい…
んなことよりこっちの存在がバレているのに
姿を出さねえなんてな、気味が悪い」
絶対的な有利は無いと分かっても土俵は相手のもの
即座に捕まえる警備員も相手に勝つ前提なら姿を出す。
ストルムから見て最後の砦は難攻不落と認識した。
「(お互いに戦力がバレている…)」
「(怖気つかねえか…動くか…?)。
声も出す気にならない。
思考伝達チャットでコドクに訴えた。
最後の最後でヤバいヤツと鉢合わせた。打開できるか?
「ごめんなさい、レーダーにはなにも…」
「ストルム、周囲に人は見当たらない。
ただの幻惑かもしれない」
「いや、いるんだ…
なんなら警備がいるはずなのにいねえ。
わざと下げたに違いねえぞ」
しかし僅かに足音が聞こえてきた。
レーダーが生体反応を拾わないのに
足音がする。つまり覚醒者だ。
こんな荒技ができるのは(幽霊)以外に誰もいない。
足音が消えた。いや、足音すら消して詰めかけた
「取ったア!」
ザシュッ!鎌の音が鎮魂歌の如く響いた。
何かわかる頃には振り向いた先を読んで背後に回る。
「風獄!」
「っと!」
距離を取る。しかし相間見えることはせず、次の一撃で決めるための
準備をする。気配すら感じることはできない、熟練の幽体の
覚醒者はまるで優位を奪わせまいと隙を見せない。
強いと断定した相手にドラマを求めない。
やればできるとかそんな話じゃ無い。
ただ仕留めれば仕事は終わる。終わらせなければならない。
「(コイツは俺一人の方が効率が良い…
アイツらには荷が重いってのは履修済みさ)」
シャドーダイブの鎌の一振りは、
指揮のように鋭く強い。獲物は笑うように
びゅうんと素振り音を鳴らす。
オーケストラで聴くクラシック名曲の如く
消えては現れて切り裂いて、
あっという間にストルムは傷だらけの体に陥った。
更に厄介なのはここからだった。
相手の動きを観察してから反撃を与えようとすると、
リュシオの側で現体する。庇護対象をこの場で
最も足手纏いになると分かった以上は、
利用しないなんて考えない無いだろう。
攻撃は全て利害において無効にされ、
防御は存在感すら消す一撃を交わすだけで精一杯。
遂には前から斬られ、出血多量で気を失いかけた。
その時思い出す、幽霊の弱点を。
「(本来幽霊なんて縁もゆかりもないんだ。
出るはずのない場所で…つまり、コイツは…)」
ストルムはリュシオの手を掴んで走り出した。
いきなりの脱出に戸惑ったが、なんと無くストルムの
考えたことが理解できる。
幽霊とは…存在しない物をあたかも在ると
決めつける事である。伝承の存在なら塩なんかで
追っ払えるが、むしろ相手は攻めてきた。
つまり幽体の覚醒者は生きる屍。
存在するものと断定しなければ良いのだ。
ストルムは風獄で風圧のトンネルを作ると、
一瞬の隙を突いてその場から脱出する。
「気づきやがった…!野郎逃すか!」
「やはりな!
そもそも幽霊なんて相手する方が間違いなんだ!」
「でも生きている。
そうね、家の中にいてもお酒を飲んで忘れる人に
幽霊のお話なんかしても意味がないわ。
それにしても無視することが弱点なんてね」
相手にされないという弱点を突かれ
想定外の残業を突きつけられた獄兵。
油断も隙もなく完全に任務を果たせる筈が
何かが足りずにとどめの一撃に至らなかった。
まるで自分が否定された様な気分だ。不愉快だ。
怨念の如く怒る彼の刃はすぐそこまで迫り来るのだった。
閲覧ありがとうございました
開幕いきなりですが本当にすいません!
前話読んでもらって頭の上に(?)が浮かんだかと思われます。
そうです。23話の分までコピーしてました。
このお話はあらかじめ書いたものを
投稿する時にメモのアプリからコピーして貼り付けて、編集…
そんな感じで投稿しています。
やあもう本当に楽しく読んでいるところ申し訳ありません!
以後気をつけて参ります。
引き続き最終話まで何卒よろしくお願いします!




