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ダンジョン攻略 2~3階層

 

 ダンジョンで夜を過ごすのは望ましくない。太陽の光が見えないから、自分たちの体感だけで時間を測らないといけない。体感的には恐らく夜だといっても、地上が本当に暗くなっているかは分からない。


 体内時計のズレは、余り続けると健康にも支障をきたしそうだ。


 野営する時には見張りが必須なので、必然的にイグニスはナラと交代で眠っている。当然、ココは見張り当番から除外だ。いつもの野営なら星の位置で大まかな時間を予想して、ナラを起こして交代してもらうが、ダンジョンの中だとそれも難しい。


 イグニスはナラとココの寝息だけが響く中で、耳を澄ませて見張りをしながら考えに耽る。小さな疑問はいくつもあるが、大きな懸念は二つ。一つはココの正体、もう一つはヨルの言っていた『ルシフェル』という異端審問官だ。


 どちらもすぐに解決はしなさそうだったが、それこそ勇者の伝承を含めて、これから旅をする中で情報を集めた方がいい。


 勇者が連れていたという従魔、冒険者ギルドに残っていた勇者一行の古びた絵を見せてもらったが、従魔はとても大きかった。ココとは比べ物にならない大きさで、四足歩行で勇者の身長を超えている大きさだった。


 伝承の姿なので大げさに描かれいてる可能性は高いが、本当にココと伝承の従魔が同じ存在かは微妙なところだ。


『クゥーン』


 ガサゴソという物音と同時にトテトテという軽い足音、途中で起きてしまったココがイグニスへと近寄って鼻を服へ押し付ける。


「起きてしまったか」


 ふわふわの頭を撫でてやれば、あぐらをかいたイグニスの足をよいしょとココの両足が跨ぐ。そして、狭い空間でくるくると回って、無理やりにイグニスの膝の中に収まった。当然、ココの身体を大きいので半分ほどはみ出ているが、当のココは目を閉じて眠る準備をしている。


「はみ出ているぞ、寝にくいだろ」


 少しボサボサになっている毛並みを手櫛で整えるように、ココの身体を丁寧に撫でていく。撫でられたのが気持ちいいのか、ココはスピスピと寝息を立て始めた。


 犬というのは本当に勝手なものだ、こちらが神妙な気持ちになっていてもお構いなしに振舞う。けれど、イグニスは多分、昔から犬のそういうところに助けられていたのだと思う。


「お前もいつか、もっと大きくなるのかもな」


 そうなったらダンジョンの中を歩けるのだろうか。


 イグニスはあり得ない想像をしながら、ナラを起こす時間までずっとココを抱いたまま見張りを続けた。





 翌朝、イグニスたちは地図を作成しながら、2階層を進んでいく。広さだけでいえば1階層と同じぐらいだろう。この階層からの新しい魔物、地中から飛び出てくるモグラは単種では強敵ではない。問題は、ゴブリンやクモといった他の魔物と混ざって出てくる時だ。

 ゴブリンやクモに気をとられてモグラの強襲を受けるのは拙い。


 幸い、イグニスたちには耳がいいココがいる。ココは音でモグラの居場所を的確に察知できるから、モグラに向かって吠えてもらうことで地中にいる段階から優先的に倒すか、或いは避けるかの対処ができる。

 他の冒険者たちはモグラには手こずるだろう、移動が見えない敵というのは厄介だ。勘で初撃を避けるというのは誰にでも出来る芸当じゃない。


 ココにモグラの相手を任せることで、ゴブリンやクモにモグラが混ざった群れにも危うげなく対処できた。今のところ、まとまっているのは3匹までなので、数が多くないのも助かっている。


 道中で見つけた宝箱を開けたら、刃がこぼれた剣と衣服が入っていた。なお、その剣や服には多少の血がついていて、ナラは言葉を失っていた。

 恐らく、ダンジョン内で亡くなった冒険者のものだろう。水を消費したお陰で荷物に空きがあったので、リュックにそれらを収納する。これは冒険者ギルドに買い取ってもらうしかない。


 ダンジョンで見つけたものは、見つけた冒険者のものになる。冒険者が落としたものであったとしても、拾った人に所有権がある。

 そういう世界であるのは仕方がない。イグニスたちに出来るのは死なないようにすることだけだ。

 ショックを受けているナラに行こうと声をかけて、イグニスは前へと進む。ココはよく分かっていないのか、ご機嫌で尻尾を振っていた。



 そして、何度か戦闘を繰り返して、幾つかの行きどまりに遭遇してから。イグニスたちはようやく下へと降りる階段を発見した。


 まだ二日経っていないから、ほとんど最短で行き着いたと言っていいだろう。イグニスが平然と階段を降りていくと下へと行き着く。その先は一本道で、狭かった通路は徐々に横にも縦にも広くなっていく。


 そして、その突き当りにはイグニスの背丈の三倍以上はありそうな大きい木製の扉が聳え立っていた。


 両開きの木製の扉は見ただけで圧を感じる。その扉の両横の壁には篝火が備え付けられていて、炎は燃え続けている。これは一体誰が設置したのだろう。


「準備はいいか?」


「……はい」


 ナラが重たい声で返す、この先にいるのはダンジョンのボスだ。そして、ボスを倒すまで部屋から出ることは出来ない。


 ココも空気の重さを感じているのか、尻尾が少し丸まっていた。イグニスはその頭を撫でて、大丈夫かと聞く。


『ワン』


 自分もついていく、そう言うかのように吠えたココは心強かった。


 そして、イグニスは重たいその扉を開いた。その先には想定外が待っていた。


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