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ダンジョン攻略 2階層

 

 2階層は1階層と同じような造りだった。照明もないのにある程度の明るさがあり、通路もそれなりに狭い。但し、1階層と違って、通路の先に真四角の広い空間がある。


 イグニスたちは初めて出た広い空間、広間には何なかった。石造りの床や壁で構成された広間はいくつかの通路に繋がっており、しんとした静けさを保っている。


「ちょっと不気味ですね」


「魔物が沢山いた方がよかったか?」


「ふふっ、何もなくてよかったです」


 イグニスの冗談をきちんと冗談と受け取ってくれるのは、ナラぐらいだ。多分、イグニスにはユーモアのセンスがないのだろう。兄のように他人の緊張を解す軽口を叩ければよかったのだけれど。


「この辺りの散策が終わったら、今日はここで寝よう」


『ワン!』


 ココが賛成するかのように吠えた。近寄ってきたココの頭を撫でる。


「繋がっている通路の先だけ、先に調べておくか」


 イグニスたちが広間から繋がった通路を進むと、その突き当りには木製の宝箱があった。以前はパンが出てきたが、今度は何が出てくるのだろう。


「私が開けますね」


「ああ、気をつけて」


 宝箱が実は魔物でした、なんて展開はお決まりだと思うが、木製の宝箱が魔物に変わる場面は想像しにくい。ナラが慎重に宝箱を開けて、中に入っているものを取りだす。


「これは、玉ですか?」


 首を傾げたナラが手に持ったボールを押すと、プーっと間抜けな音が響いた。びっくりして固まったナラに反して、ココが尻尾をぶんぶんと振る。


 ……犬や子どものおもちゃでよくある、押すと音が鳴るボールにしかみえない。イグニスはナラからボールを受け取ると、後でな、とココをなだめてボールをリュックにしまう。


 そして、広間に戻って今度は別の道を進んでいく。この道をクリアリング、魔物がいないか確認したら広間に戻って寝る手はずだった。


『ヴー』


 何かの気配を感知したココが唸る。イグニスは刀の柄に手をかけて、神経を研ぎ澄ます。土の匂いが強くなっている、微かな地面の振動が大きくなっていく。


「下だ!!」


 言葉とともに地面を蹴って後ろに後退、ナラを庇うように片手で押して距離をとらせる。


 イグニスが立っていた土の中から、魔物が勢いよく飛び出してきた。目は潰れていて、硬い毛を持っており、爪と手は大きく地面をかき分けるだけの力がある。大きさは枕ぐらいで爪にあたると結構な怪我を負いそうだ。土モグラはそのまま宙を舞ってイグニスへと飛び込んでくる。


 抜刀とともに居合切りでモグラの胴体を半分に斬り落とす。


「ココ、地面から出てくるから止まるな」


『ワン!』


 ココにつられて、もう1匹いるだろう地中のモグラはあっちへこっちへと動きつづけている。イグニスは大剣を鞘から抜くと辺りをつけて、そのまま地中へと深く突き出した。


 何の声もしなかったが、手ごたえはある。土を掘ってみれば、土モグラが落とした素材だろう大きな爪が残っていた。胴体を斬った土モグラがいた場所にも同じ素材が落ちている。


「他の魔物と混ざると厄介だな。次からは地中にも気をつけよう」


「魔法で予め土を操作して倒せないでしょうか?」


「姿を探知できないと難しいと思う」


 イグニスとナラが真剣に話していると、クゥーンとココが鳴いてイグニスのリュックへ鼻を押し付ける。


「腹が減ったか、長くなって悪いな。戻ろう」


 ココは自分がご飯を貰って当然!という顔をしているが、排泄をしていない時点で本来ご飯がなくても生きられるのではとイグニスは少し思っている。

 けれど、本犬は欲しがるし、何より仲間なのだから食料を分け合うのは当たり前だ。



 広間に戻るとやはり誰もいない。ダンジョン内でも火はつけられるが、丁度いい木が手に入らないので大抵は冷たい食事になることが多い。但し、イグニスは火魔法が使えるのだ。


『炎よ』


 鉄製の簡易的な窯の下に魔法で炎を生み出す。その上には野菜や干し肉が入った鍋が置かれている。


「沸騰するまでその調子でお願いします」


 因みに他の冒険者たちはこういう魔法の無駄遣いはしないらしい。冒険者の集まりである『サバイブ』で食事の話題になった時、イグニスたちの話を聞いた他の冒険者たちはその場で綺麗にずっこけていた。

 元々イグニスは剣が主体の前衛で魔法を使う機会が少ないので、こういうのは魔法の練習にもなって丁度いい。


 料理はナラの担当だ、イグニスは料理に自信がないのでありがたい。簡単な食事を済ませた後は、交代で眠るところなのだが。


『プー、プ、プッ』


 間抜けな音がココの口から響く。ついさっき手に入れたボールはココのお気に入りになったようで、イグニスのところに持ってきては何度も遠くへ投げて、イグニスの元へとボールを返す。

 飽きたら今度は自分だけでボールを抱え込んで鳴らしている。


「ココちゃんにとってはいいお宝だったみたいですね」


 ナラが微笑む。宝箱の中身は冒険者ギルドで買い取ってもらえるらしいが、これは売らずにココのおもちゃになるだろう。


 イグニスが当初想定していた冒険者生活とは随分違う。


 ナラとココのお陰で、静かな広間は間抜けな音がする穏やかな広間になっていた。


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