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クエスト受注

 

 リカルドは大きな声をあげて剣を振るう。ナラは時折小さな悲鳴をあげながら、それでも魔物の攻撃を確実に回避して隙を作り魔法を放つ。正直、二人とも危うげで見ているイグニスまでドキドキしてしまったが、そこはぐっと堪えた。



 イグニスとグリドは二人を後ろから見守りながら、分かれ道の度に地図を記して、地上を目指して進む。2回ほど戦った後、行きと同じ地上へと続く階段が現れた。



 地上に出て太陽の光を浴びると自然と一息つく、暗い地下よりは明るい地上の方がずっと落ち着く。リカルドたちと素材を分けてから、冒険者ギルドで素材を買い取ってもらう。ギルドの前でリカルドは両手で手を振って、グリドは小さく頭を下げた。


「色々ありがとな。今度会ったら、俺と手合わせしてくれ~!」


「本当に助けられた、俺たちに出来ることがあったら何でも言ってくれ」


 イグニスも頭を下げて、ナラは小さく手を振る。既に日は落ちて、辺りは暗闇に満ちていた。ギルドや一部の店は明かりがついているお陰で歩けているが、街を出ると松明などの明かりがなければ歩くことすら難しい。


 イグニスとナラは隣に並んで、泊まっている宿へと歩き出す。


「明日は依頼、クエストを受けよう」


「冒険者ギルドが受けた村や商人からの依頼、なんですよね? 難しくないといいんですけど」


「ダンジョンでも問題なかったから、大丈夫だと思う」


 冒険者ギルドの壁に貼り出されている紙にはギルドが受注した依頼が記載されている。魔物退治だけでなく素材や薬草の収集、商人の護衛なんてものもある。そういう依頼のことをクエストと呼ぶらしい。


 壁に貼られた紙を受付にもっていけばクエストを受注できるが、クエストごとにランクが決まっている。自分たちの冒険者ランクより一つ上のランクまで受注できるので、EランクのイグニスたちはDランクのクエストまでなら受注できる。


 クエストを受けて達成すれば、報酬が貰える。クエストによっては、報酬としてお金以外に武器や魔道具が貰えることもあるらしい。


「護衛系は避けて、採取や退治を中心に探そう」


 二人で受けるには護衛は難しい。ダンジョンでそれなりの量の素材が採れたので、財布もひっ迫してない。無理はしないけれど、クエストはランクが上のものを受けた方がいいかもしれない。


 冒険者カードに書かれたEランク、クエストの成功や素材の買取額を考慮して冒険者のランクは上がっていくらしい。高位のランクになれば、冒険者ギルドの信頼も厚くなり、名指しでギルドからクエストを受注することもある。


 明日の朝に冒険者ギルドに行こうと話して、宿の二階にある部屋へと戻った。






 イグニスはずっと恵まれて生きていた。宿の裏手にある開けた空間で、刀を両手で持つ。何度も何度も素振りを続ける。一振り一振りを丁寧に、そこにないものを斬れるように。


 努力は裏切らないなんて言わない、努力しても死ぬ時は死ぬ。刀を振るう、振るい続ける。それでも、死ぬ時に後悔がないように。


 きっと昔の自分は後悔していたのだと思う。だから、ぼんやりと記憶が残っている。刀を振るう度に、ぼやけた記憶の輪郭が露わになる。道場、竹刀、視界は悪く汗の匂いがしていた。荒れた息が記憶と重なる。疲れで握った刀が重くなっていく。それでも、刀を振るう。


 一度、刀を鞘に収める。息を整えてから、抜刀とともに斬りこむ。居合術だったか、居合切りだったか。鞘から抜くっていう動作を飛ばせる分だけ早くなるが、鞘から抜く一度だけしか使えない。


 何度も何度も続けたところで、イグニスを呼ぶ声が聞こえた。


「そろそろ遅いから、寝ましょう」


 ナラも少し離れたところで鍛錬していたのだろう、その手には杖が握られていた。相棒の声に頷いて、刀を鞘に収める。


 いつもナラがいてくれてよかったと思う。グリドがリカルドに救われたように、イグニスもナラに救われている。


 グリドに言ったことはイグニスにも跳ね返ってくる。そう、二人だけでは戦力として心もとない。本当なら、敵の注意を引ける前衛が一人ほしい。


 スキルがないという時点で仲間を誘うのは難しくなるし、何より信頼できない相手とは組みたくない。この付近なら二人だけでもなんとかなるが、もっと強い魔物が出る地域なら二人だけで生き残るのは難しくなっていく。


 縁があれば、誰かを誘おう。イグニスはそう考えながら、ナラと二人で宿に戻った。





 冒険者ギルドは早朝から人が多い。特にクエストは朝に新しく貼りだされるものが多いらしく、冒険者が壁に集っていた。イグニスは壁に貼り出されたものを一見すると、Dと書かれた一枚の紙を選んでナラへと見せた。


「近隣の村からの依頼だ。シルバーウルフの討伐で数は6、大体の場所の指定はあるが、討伐証明は耳を切り取ればいいだけらしい」


「数が多いですね、頑張ります!」


 ナラも賛成してくれたので、ギルドの受付でクエストを受注する。地理を把握するのに必要な地図を貸してくれたが、預かり金として銀貨1枚が必要だった。地図を返却するとお金を返してくれるらしい。


 借りた地図は羊皮紙で出来ており、街から少し離れた周辺の村や森までの道が細かく書き込んである。こういう地図は作るのが大変そうだ。


「準備をしてから出よう」


 準備を終えたイグニスとナラは、期待と少しの不安を胸にグラナードの街を出た。


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