表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

第2話「ズレの正体」

コンペ用の資料は、順調に仕上がっていった。


――表面上は。



「このデータ、もう少し強調できる?」


神谷がモニターを指さす。


「あとここ、課長が気にしそうだから補足入れといて」


高橋が続ける。



北川は無言で修正を加える。


数分で、すべての指摘は形になった。



「ほんと早いよな」


中村が軽く笑う。



(……一人でやってるからな)


北川は答えなかった。



夕方。


資料は完成した。



「これでいけるね」


神谷が頷く。


「明日のチェック、俺らで通すから」


高橋がUSBを手に取った。



“俺らで”



北川は何も言わない。


それが当たり前になっていた。



夜。


オフィスにはまだ数人残っていた。



課長席には黒瀬。

少し離れた席に藤堂と山口。

そして北川たちのデスク。



距離にして、数メートル。



北川はいつものように、残作業をしていた。



その時だった。



視界が、わずかにブレた。



「……?」


目の前の画面ではない。



“横”だ。



黒瀬の方に視線を向けた瞬間――



一瞬だけ、何かが“重なった”。



――82

――85

――74

――78



「……っ」


思わず目を細める。



消える。



(今の……)



心臓の音が少しだけ大きくなる。



もう一度、黒瀬を見る。



何もない。


ただ電話をしているだけだ。



(気のせい……か?)



そう思って視線を戻す。



だが数秒後、また起きた。



今度は藤堂の近く。



――77

――68

――80

――75



「……なんだよ、これ」


小さく呟く。



“人に反応している”



その感覚だけははっきりしていた。



距離も近い。


視界に入っている人間。



その時だけ、何かが見える。



だが、まだ不完全だ。



(+?)の部分は見えない。

意味も分からない。



ただ一つ分かるのは――



(人によって違う)



同じじゃない。


誰もが違う数字を持っている。



その時、黒瀬が立ち上がった。



距離が少し縮まる。



その瞬間。



さっきよりも“はっきり”見えた。



――82

――85

――74

――78



ノイズは減り、輪郭が強くなる。



「……っ」



(近いほど、見える……?)



仮説が浮かぶ。



だが同時に、違和感もあった。



(なんで、こんなものが……)



それは“能力”なんて言葉で片付けられるものじゃない。



ただ一つ確かなのは――



“今まで見えていなかったものが見えている”



それだけだった。



誰も気づいていない。



この異常に。

このズレに。



北川だけが、それを認識し始めている。



そしてそれは、もう止まらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ