第17話「加速」
朝。
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小さなオフィス。
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キーボードの音が、二つに増えていた。
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「この案件、構成だけ先に作ります」
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佐伯が画面を見たまま言う。
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「任せる」
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短く返す。
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無駄な会話はない。
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だが――
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(回るな)
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北川は静かに思う。
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これまでは一人。
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すべてを自分でやっていた。
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だが今は違う。
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“分担”ができる。
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佐伯が構成を作る。
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北川が精査する。
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無駄を削る。
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完成度を引き上げる。
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(速い)
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そして――
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“質が落ちない”
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数時間後。
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一本目、完成。
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「確認お願いします」
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「……いいな」
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修正は最小限。
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ほぼ完成している。
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(使えるどころじゃないな)
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その日のうちに、二件目。
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さらに三件目。
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(回りすぎだろ)
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一人では不可能だった量。
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それが、当たり前のように処理されていく。
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数日後。
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評価が並ぶ。
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「非常に質が高い」
「スピードも申し分ない」
「継続でお願いしたい」
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評価:★★★★★
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+5
+5
+5
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継続ボーナス:+20
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# ■主人公専用ステータスUI
【ステータス】
名前:北川 聡
年齢:22
役職:代表取締役
性別:男
振り分け可能ポイント:35
判断力 328(+300):S
交渉力 439(+420):S
集中力 354(+323):S
処理力 330(+316):S
資産:増加中(継続案件により安定収益化)
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(……いいな)
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ポイントも増える。
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収益も増える。
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そして――
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時間が余る。
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「次の案件、もう一段上げてもいいと思います」
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佐伯が言う。
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(分かってるな)
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「問題ない」
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基準が上がる。
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これまでの“取れる案件”ではない。
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“選ばれる案件”
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単価が上がる。
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難易度も上がる。
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だが。
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問題はない。
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二人で回せばいい。
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数週間後。
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案件数。
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単価。
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評価。
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すべてが伸びていた。
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(加速してるな)
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止まらない。
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北川は静かに画面を見つめる。
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かつては一人で奪われていた仕事。
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今は違う。
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“自分で回している”
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そして。
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“増やしている”
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(次は――)
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さらに上。
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北川はキーボードを叩く。
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小さな会社は。
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確実に。
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“企業”へと変わり始めていた。
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