第15話「選択」
設立から数日。
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会社としての仕事は、順調だった。
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依頼は途切れない。
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評価も落ちない。
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(問題ないな)
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北川は淡々と処理を続けていた。
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その時。
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インターホンが鳴る。
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(……?)
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来客の予定はない。
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北川はゆっくりと立ち上がる。
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扉を開ける。
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そこにいたのは――
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「……北川」
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神谷だった。
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その後ろには。
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白石。
中村。
高橋。
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(全員か)
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かつてのチーム。
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だが――
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別人のようだった。
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覇気がない。
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自信がない。
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目が、死んでいる。
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「……どうした」
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北川は淡々と聞く。
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神谷が一歩前に出る。
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「……お願いがある」
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声が震えている。
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「俺たちを……雇ってほしい」
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沈黙。
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(来ると思った)
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だが。
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北川の表情は変わらない。
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「理由は」
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短く問う。
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「……仕事が、ない」
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神谷が答える。
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「どこ行っても通らないんだよ……」
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白石が俯く。
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「資料作っても、通らない」
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中村の声は弱い。
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「評価も、全然つかなくて……」
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高橋が続ける。
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(当然だ)
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本来の実力。
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それが、今の状態。
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「……お前なら分かるだろ」
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神谷が顔を上げる。
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「俺たち、やれる」
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(違うな)
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北川は心の中で否定する。
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“やれていた”だけだ。
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「……無理だな」
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即答。
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「っ……!」
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神谷の顔が歪む。
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「なんでだよ!」
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声が荒くなる。
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「俺たち、同じチームだっただろ!?」
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「違うな」
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北川は静かに言う。
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「お前らは“取ってただけ”だ」
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沈黙。
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「……俺は、作ってた」
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言い切る。
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誰も反論できない。
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「……一度も、名前出さなかったな」
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北川は淡々と続ける。
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「一度も、評価を返さなかった」
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「それで今更、“雇え”か」
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空気が凍る。
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神谷が、何も言えなくなる。
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「……帰れ」
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短く。
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「ここに、お前らの席はない」
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扉を閉める。
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外から、何も聞こえない。
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完全に、終わった。
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北川は席に戻る。
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表情は変わらない。
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(これでいい)
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情はない。
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必要もない。
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“選んだ結果”だ。
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北川は再びキーボードに手を置く。
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仕事は止まらない。
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外では。
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四人が立ち尽くしていた。
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何もできずに。
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ただ、現実を理解しながら。
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