「ローマの休日」のスローリーディング その21
◎場面9
アービングに電話をかけたジョーはアパートに帰って来る。
部屋にアンの姿がなかった。
アンはサンサンと太陽が降り注ぐ広々としたベランダにいた。
(英語のセリフ)
〇ジョー: There you are!
〇アン: I was looking at all the people out here. It must be fun to live in a place like this.
〇ジョー: Yeah, it has its moments. I can give you a running commentary on each apartment.
〇アン: I must go.
〇ジョー: Hmm?
〇アン: I only waited to say goodbye.
〇ジョー: Goodbye?-But we've only just met. How about some breakfast?
〇アン: I'm sorry, I haven't time.
〇ジョー: Must be a pretty important date to run off without eating.
〇アン: It is.
〇ジョー: Well, I'll go along with you, wherever you are going.
〇アン: That's alright, thank you; I can find the place. Thank you for letting me sleep in your bed.
〇ジョー: Oh, that's alright; think nothing of it.
〇アン: It was very considerate of you. You must have been awfully uncomfortable on that couch.
〇ジョー: No, no-do it all the time.
〇アン: Goodbye, Mr. Bradley
〇ジョー: Goodbye. Oh: go right through there and down all the steps.
〇アン: Thank you
(私訳)
〇ジョー: ここにいたのか
〇アン: 人通りを見ていたの。こんなところに住んだら楽しいでしょうね
〇ジョー: そうだね。どこにもいいところがあるからね。ちょっと説明しようか
〇アン: もう行かなくては
〇ジョー: えっ
〇アン: お別れだけ言おうと
〇ジョー: お別れ?会ったばかりじゃないか。朝食はどう?
〇アン: 時間がないの
〇ジョー: 食事もしないで行くなんてよっぽど大切な約束なんだろうね
〇アン: そうよ
〇ジョー: 行く先までお供しよう
〇アン: 大丈夫。一人で帰れるわ。ベッドを貸してくださってありがとう
〇ジョー: いいんだ。大したことはない
〇アン: 本当に親切にしていただいて。長椅子の寝心地は悪かったでしょう
〇ジョー: いや、いつものことだ
〇アン: さよなら。ブラッドレーさん(アンは部屋を出て行く)
〇ジョー: さよなら。 そこの階段を降りるんだ。
〇アン: ありがとう
(ちょっと一言)
しばらくしてジョーが部屋に戻って来ると、ルイーザ台風はすでに過ぎ去り、アンは陽がサンサンと照るテラスに出てあたりの風景を眺めている。
はるか昔、1970年代の学生時代、日当たりのすこぶる悪い、狭い木造の学生アパートに住んでいた私は、京都の名画座でこの映画を見た時に、このジョーのアパートにあこがれたものだ。
ワンルームではあるが広々としたジョーの部屋を見てみよう。
ベッド、サイドテーブル、長椅子、肘掛け椅子2脚、デスク、椅子、電話、コーヒーメーカー、バスルーム、そして何より私をうらやましがらせた多角形の屋外テラス。
そこにはいくつかの鉢植が置かれ、椅子があり、見上げればローマの青空が広がっている。
周囲にはローマの庶民が暮らすアパートや教会、歴史的建造物。
私と違って普段は宮殿に住んでいるアン王女もこの環境はうらやましかったらしくこう言っている。
It must be fun to live in a place like this.(こんなところで暮らすのはきっと楽しいでしょうね)
このアパートの住所は、前夜ジョーがタクシー運転手に告げた通り「マルグッタ通り51番地」。
「マルグッタ通り51番地」は映画の中の架空の住所ではなく、今もローマに実在する。
アンがジェラートを食べるシーンで有名になったスペイン広場からポポロ広場へと続く繁華なバブイーノ通りの一本裏手、マルグッタ通りは車の通りも少なく、緑の豊かな落ち着いた400mほどの短い通りである。
かつてはパブロ・ピカソがアトリエを構えていたし、フェデリコ・フェッリーニ監督とジュリエッタ・マシーナ夫妻はマルグッタ通り110番地住んでいた。それを記念するプレートが壁に埋め込まれているのでそれと分かる。
(こんなところで暮らすのはきっと楽しいだろうなあ)と、私もアン王女と同じ感想を持ったものだ。




