「ローマの休日」のスローリーディング その20
◎場面9
ジョーが外で電話をしている間に、アパートの管理人であるジョバンニの妻ルイーザが掃除用具を持って部屋にやって来る。
そしてバスルームでシャワーを浴びているアンを発見し、ルイーザの怒りが爆発する。
(ちょっと一言)
ジョバンニが鶴のように痩せているのに対し、妻のルイーザはイタリアの高齢の女性によく見られる太り型。
このルイーザを演じているのはPaola Borboniパオラ・ボルボーニ。
「ローマの休日」が公開された1953年、彼女はこの映画を含めて12本の映画に出演している。脇役とはいえ一年に12本の映画に出演するとは、彼女がいかに売れっ子の役者であったかが分かる。
その12本の中にはピエトロ・ジェルミ監督の「嫉妬」、フェデリコ・フェッリーニ監督の「青春群像」も含まれ、イタリアを代表する名監督に彼女が重宝されていたことがうかがわれる。
出演回数でいえば日本にも同様の例があって、日活時代の石原裕次郎は一年に10本の映画に出ていたこともあった。しかもこちらはすべてが主演としてである。
セリフの多さは脇役とは比べ物にならないだろう。
裕次郎は会社側のこの酷使と、毎回の企画の陳腐さに憤慨し、呆れかえり、撮影を前にして失踪したこともある。
さて、ルイーザが部屋に入るとバスルームから水音がする。
「何事ならん」
ルイーザが浴室のドアを開けると若い女がシャワーを浴びている。朝、独身者のジョーの部屋で女がシャワーを浴びているとなると、ルイーザでなくとも昨夜この部屋で何があったのか、およその想像はつこうというもの。
ルイーザはイタリア語でまくしたてる。
Fuori subito!「外に出ておいで!」
Macche 「とんでもない!」
Un bel niente”sucusi”「なにがごめんなさいだよ」
Ma se io fossi la sua mamma, ma sa quani schiaffi le darei「私がお前さんの母親なら、顔がこんなになるくらいひっぱたいてやるところだよ」
Bella vita,eh?「結構なお暮しだよ」
とアン王女を怒鳴りつける。
Vergogna!「この恥知らず!」
というルイーザの罵声を浴びながら、アンはほうほうのていで浴室に逃げ込む。




