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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
9章_厄災が眠る場所

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9.xx_科学者のレポート_魔法の性質 ※番外偏

Ⅰ.概要


昨年(2231年)の12月14日より、日本で観測されている魔法という現象。


初の魔法観測から1ヵ月が経過し、その時間で魔法の解明が進んだ。


本稿は、この1ヵ月で分かった魔法の性質について、「ネクスト」と比較しながら執筆していくものである。





Ⅱ.5次元空間 (情報空間)について


本稿を読む者にとって説明は不要ではあるが、前提条件として記載する。


昨年観測された魔法現象。

及び、約100年前に発見されたエネルギー「ネクスト」。


これらは、5次元空間 (情報空間)に存在するエネルギーを、4次元空間 (物理空間)に落とし込んだ物である。


物理空間は、縦・横・高さ・時間の要素からなる。(xyz,t)


情報空間とは、物理空間の上位に位置し、物理空間の在り方を決定する空間である。


情報空間が上で、物理空間が下という関係性だ。


すなわち、物理空間は、情報空間の支配下にある。

情報空間の法則に則って、物理空間の事象は決定される。


情報が物理を決定する。

それが、ネクスト発見以降の時代、新現代での科学的常識だ。


情報が物理を支配している例として有名なのが、生物のDNAだ。


生命とは、極めて緻密で、なおかつ極めて低温な状態で、多用な化学反応を起こしている。


生命とは、一見すると熱力学の大法則、エクセルギーの性質を無視しているように見える。


宇宙の万物は、「均一化」という不可逆的な変化を起こす。

それがエクセルギーの考え方だ。


我々の宇宙とは、情報により、そう決定されている。


お湯と冷水を混ぜてしまえば、そこからはもう、お湯も冷水も取り出せない。

これがエクセルギーであり、宇宙を支配する「均一化」や「平衡化」である。


しかし生命は、見かけ上はその法則を無視している。


生命は食物を取り込み、体内で化学反応を行い、排泄を行っている。


人間であれば、数万から数十万の化学反応を絶えず行っている。


36度の鍋で、ひとつだけの反応ではなく、数万にも及ぶ化学反応を起こしているのだ。


この時、ひとつひとつの化学反応は、他の反応のノイズとなっている。

にも関わらず、生命の鍋は秩序立って、絶えず調理を続けている。


その調理を管理しているのが、DNAだ。

DNAという「情報」が、化学反応という「物理現象」を支配、管理しているのだ。


そして、DNAには寿命があり、人間の場合は約120年となっている。

生命とは、DNAの持つ「情報」を消費し、生命活動という「物理現象」を維持している。


情報空間と、情報エネルギーの存在は、今から200年前には提唱されていた。

その研究により発見されたのが、ネクストである。


ネクストや魔法は、「情報」の性質を持つ。

ネクストは「万能物質」として、現代社会を支えている。


このように、宇宙は、情報が物理を支配し、決定している。


物理空間よりも上位に位置する情報空間は、無限の広さを持つ。

情報空間に存在する情報エネルギーは、無限の埋蔵量を持つ。


情報エネルギーとは、無限無制限のエネルギーであり、相対性理論や量子論を超越した振る舞いをする。


宇宙の在り方を決定するエネルギーであるため、物理法則を書き換えたり捻じ曲げたりする性質を持つ。





Ⅲ.魔法の性質


魔法の大まかな特長としては、大きく2つ挙げられる。



(1)塑性エネルギーである

(2)行使には、何らかの素質が求められる



魔法とは情報エネルギーの中でも、「塑性」のあるエネルギーだと言える。


ネクストに比べて、変化に富み、ネクストでは実現が困難な現象を引き起こすことができる。


ただし、誰にでも扱えるという訳ではなく、現状は限られた人間しか扱えない。


魔法を行使できる人間は、本稿を執筆している時点(2232/1/23)で、18名。


日本で最初に魔法を行使した、久遠(くおん) 刹那(せつな)によれば、「魔力」を知覚できれば魔法の行使が可能となるとされている。


現状、この魔力を知覚する方法は確立されていない。


ネクストは、ギアや電脳野があれば、誰でも使用が可能である。

※ギアや電脳野の所有については、法の定めるところにより、ライセンスが求められる。


適切な道具があれば誰でも使用が可能なネクストと異なり、魔法については現状、使用に素質が求めらている。





Ⅳ.魔法の塑性について


先述の通り、魔法は塑性に富んだ現象である。

魔力を変化させ、多様な事象を引き起こすことができる。


何も無い空間で発火を起こす。

剣や銃などの武器を作り出す。

任意の座標まで、一瞬で移動する。


このように、実に多様な現象を起こすことができる。


可塑性と柔軟性に富む現象。

それが魔法の特徴であると言える。



反面、強度については、ネクストに著しく劣る。


ネクストは、万能物質とも呼ばれるエネルギー。

魔法と比較し、「剛性」に秀でたエネルギーである。


剛性に秀でているため、ネクストを他の物質へと加工し、状態を固定化できる。


現代社会では、ネクストを既存の原子に加工し、鉄や貴金属として工業製品に使ったり、リンやカリウムに加工し農業肥料として使用している。


魔法には、これらの剛性が今のところ確認されていない。

状態の保存能力は、ネクストに比べて不安定で、脆弱である。


そのため、魔法によって生み出された火球や氷は、その温度や硬度に()らず、ネクストとギアで無力化される場合がある。



なお、魔法の戦術的な価値については、本稿の主旨とは逸れるため割愛する。





Ⅴ.魔力とネクストの、情報濃度について


魔法を構成する魔力。

及び、万能物質ネクスト。


これらは、情報空間に存在する、情報エネルギーである。


情報空間は無限の広さを持ち、情報エネルギーは無限の埋蔵量を持つ。


ここで、科学者の疑問となるのが、魔力とネクストの「情報濃度」である。


数学の集合論によれば、無限にも大小関係があることが証明されている。


集合論では、整数と奇数、整数と偶数の大きさは、等しいことが分かっている。

整数・奇数・偶数、これらは無限個の数が存在する。


そして、これらの無限は、大きさが等しいのである。

やや直感的ではないが、整数と奇数と偶数は、同じ大きさの集合なのだ。


これらの集合よりも大きな集合を持つのが、実数の集合である。

整数と実数では、実数の方が無限として大きな集合となることも証明されている。


このように、無限にも大小関係があり、それを濃度と呼ぶ。


であれば、魔力とネクストにも、大小関係があると考えられる。

この大小関係はいわば、無限の中の「領域」と「座標」を知る手掛かりとなる。



果たして、魔力がネクストの性質を内包しているのか?

あるいは、ネクストが魔力の性質を内包しているのか?


または、互いに相容れない集合を持ち、情報空間には他のエネルギーが存在するのか?


魔力の発見と、ネクストとの比較は、これらを探る手掛かりとなる。


集合の大きさや濃度の大きさとは、つまり、その情報エネルギーの限界を示す。


現在は、実験による魔法の研究と解析が主だっているが、理論による研究も進めていくことが肝要であると考える。



ビックバンを、誰も見たことがない。

しかし、宇宙の始まりはビックバンだと、理論によって定説化されている。



今後、魔法によって起こる諸問題を想定し、信頼できる理論家(りろんや)による研究も求められる。





Ⅵ.暗い月の奇跡 (夕暮れの禁忌)について


2232年1月14日、時雨 アイが、暗い月の女神と接触した。


彼女の管理者であり、魔法の研究に携わっている遠藤(えんどう) 啓介(けいすけ)によれば、魔法とは、新月の女神によって地球に持ち込まれたと言う。


新月の女神が、先述の久遠を介し、地球に魔法をもたらしたのだ。

新月による魔法の発現から1ヵ月後、アイが暗い月と接触。


アイの証言によれば、暗い月はアイに「奇跡」を与えた。


現時点で、魔法と奇跡の違いは判明していない。


しかし、暗い月が無差別に奇跡を与えることを考慮し、彼女の奇跡の性質についても、調査が求められる。


そのため、不確かな情報が多いが、現段階で分かっていることを記載する。


暗い月の奇跡は、大きく分けて2つの性質の奇跡に分類される。



(1)女神の神秘に触れ、大きな力を生み出す奇跡。

(2)魔力やネクストによる防御を無視する、必中必達の奇跡。



(2)に関しては、いわゆる呪いや呪術のような性質であると思われる。


魔法もネクストも扱える久遠に、(2)の性質を持つ奇跡を受けてもらったが、アイの行使した奇跡を防ぐことはできなかった。

※実験で、それぞれ10回試行したが、1度も防ぐことができなかった。



(2)の必中必達は、ネクストやギアによっても防げない。

筆者は、(2)の存在に強く危機感を抱いている。


もし今後、女神から暗い月の奇跡を与えられた者がいれば、その者を厳格な監視下に置かなければならない。


魔法は現状、分別のある人間のみが目覚めているが、奇跡はその限りではない。

一般人が手にしてしまうことも考慮し、対策を練ることが求められる。





Ⅶ.マジック&サイバーパンクというVRゲームについて


前項で存在を示唆した、月の女神。

新月の女神に、暗い月の女神。


彼女たちは、シグレソフトというゲーム会社が販売しているハードVRゲーム、マジック&サイバーパンク (M&C)の登場人物である。


この開発に携わった遠藤に因果関係を聞いてみたところ、M&Cの開発には、新月の女神が関わっていることが分かった。



魔法という現象が確認された以上、科学は神の存在を否定できなくなった。



M&Cの世界は、女神によって構築され、ゆえにシステムの一部がブラックボックスとなっている。


女神の力なのか、その世界はあり得ないほど緻密に構築されている。

書店や図書館を覗けば、まるでその世界が本当に存在しているかのように、大量の出版本が並んでいる。


この本の中には、魔法の理論について記述されている物も確認されている。


現実と電脳は違う。

それは大前提としても、女神が関わったという世界に、魔法の知識を求めるのも選択肢といえる。





Ⅶ.総括


本稿での主張は、以下の5つ。


(1)魔法とは、塑性エネルギーである。

(2)魔法は、ネクストの剛性に脆弱であることが確認されている。


(3)魔法の実験による解析だけでなく、理論によるアプローチも求められる。


(4)魔法だけでなく、奇跡という現象も確認されており、そちらの解析も必要。


(5)女神が作ったとされる電脳世界があり、そこに調査の手を伸ばすのも選択肢として提案する。



今後も、魔法を行使できる者は増えてくると予想される。


1日でも早く魔法を理解し、平和的に活用できるよう、この研究に携わる科学者は尽力すべきだ。

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