【第1審】~21~
「どうして!」
オオカミの抗議の声にも裁判長は耳を貸す気配は無い。
アケチは木槌を握り、大きく二回鳴らした。
ドン!ドン! という重い音が法廷を静寂で支配する。
「判決を言い渡す!
赤ずきん、即刻死刑に処す!」
「そんな!」
今にもアケチに掴みかかろうとするオオカミを、
すんでのところでロブが引き留めた。
「待ってくれ裁判長!いくらなんでもそれは!」
「まだ子どもとはいえ、殺人を犯したんだ。
しかも、計画的な犯行で相当悪質だ。死刑で当然だろう。」
アケチの視線は冷徹で感情が読み取れない。
法廷内がしんと静まり返り誰も言葉を発することができなかった。
死刑宣告を受けた少年赤ずきんは、
黙ってそれを受け入れているようにも見える。
硬直した空気を破ったのは、アケチ本人だった。
「・・・と言いたいところだが。
おっさん、あんたの目論見にのってやるよ。」
「おっさんは、やめろ!」
今のドローのひとことで、アケチは確信した。
目論見はあるのだ。
しかも、おそらく“上”からの。
「裁判長!どういうことなんですか?
赤ずきん……彼の判決はどうなるんです?」
やっと血の気が戻ったブルーが、
それでも必死に弁護しようと食い下がる。
「赤ずきんは、ドローが探していた“弟”だ。」
「は? いや、でも・・・!」
ブルーは困惑して少年とドローを見比べている。
「何がなんだか……だぜベイベー。」
すべての混乱と困惑をかき消すように、アケチはもう一度木槌を振るった。
「改めて判決を言い渡す!
赤ずきん、お前は本来の姿に戻り、ドローと共にゲンジツの世界へ行け!
ドロー、しっかりと送り届けろ!
どうせ、お前の“弟”なんかじゃないんだろ?
詳しくは聞かないでおいてやる!
その代わり、これ以上おとぎの世界への滞在は許されない。」
「へいへい。俺にはもう用が無い世界さ。」
唖然としているロブとブルーを尻目にアケチは少年に向き直った。
本来の姿に戻った少年は不貞腐れた様子で唇をかみしめている。
「赤ずきん。
ゲンジツの世界が厳しいとか、
ちゃんと罪を償えとか説教じみたことを言うつもりはねぇよ。
だけど、俺は情状酌量もしてねぇし、お前に同情もしねぇ。
それがお前がこれから手に入れるモンだ。」
「・・・・わかった。」
案外しっかりとした瞳で見返してくるなと俺は思った。
こいつなら大丈夫だ。きっと。
それよりも問題は・・・・




