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おとぎ裁判  作者: 神楽澤小虎
23/32

【第1審】~21~



「どうして!」

オオカミの抗議の声にも裁判長は耳を貸す気配は無い。

アケチは木槌(ガベル)を握り、大きく二回鳴らした。

ドン!ドン! という重い音が法廷を静寂で支配する。


「判決を言い渡す!

 赤ずきん、即刻()()に処す!」


「そんな!」

今にもアケチに掴みかかろうとするオオカミを、

すんでのところでロブが引き留めた。

「待ってくれ裁判長!いくらなんでもそれは!」


「まだ子どもとはいえ、殺人を犯したんだ。

 しかも、計画的な犯行で相当悪質だ。死刑で当然だろう。」

アケチの視線は冷徹で感情が読み取れない。

法廷内がしんと静まり返り誰も言葉を発することができなかった。

死刑宣告を受けた少年赤ずきんは、

黙ってそれを受け入れているようにも見える。


硬直した空気を破ったのは、アケチ本人だった。


「・・・と言いたいところだが。

 おっさん、あんたの目論見(もくろみ)にのってやるよ。」


「おっさんは、やめろ!」

今のドローのひとことで、アケチは確信した。

目論見はあるのだ。

しかも、おそらく“上”からの。


「裁判長!どういうことなんですか?

 赤ずきん……彼の判決はどうなるんです?」

やっと血の気が戻ったブルーが、

それでも必死に弁護しようと食い下がる。


「赤ずきんは、ドローが探していた“弟”だ。」

「は? いや、でも・・・!」

ブルーは困惑して少年とドローを見比べている。

「何がなんだか……だぜベイベー。」


すべての混乱と困惑をかき消すように、アケチはもう一度木槌(ガベル)を振るった。


「改めて判決を言い渡す!

 赤ずきん、お前は本来の姿に戻り、ドローと共に()()()()の世界へ行け!

 ドロー、しっかりと送り届けろ!

 どうせ、お前の“弟”なんかじゃないんだろ?

 詳しくは聞かないでおいてやる!

 その代わり、これ以上おとぎの世界への滞在は許されない。」


「へいへい。俺にはもう用が無い世界さ。」

唖然としているロブとブルーを尻目にアケチは少年に向き直った。

本来の姿に戻った少年は不貞腐(ふてくさ)れた様子で唇をかみしめている。


「赤ずきん。

 ()()()()の世界が厳しいとか、

 ちゃんと罪を償えとか説教じみたことを言うつもりはねぇよ。

 だけど、俺は情状酌量もしてねぇし、お前に同情もしねぇ。

 それがお前がこれから手に入れるモンだ。」


「・・・・わかった。」

案外しっかりとした瞳で見返してくるなと俺は思った。

こいつなら大丈夫だ。きっと。


それよりも問題は・・・・



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