【第1審】~19~
「アケチ!!」
ハッと目を開けると、心配そうに俺をのぞき込むジュードの顔があった。
気が付くとそこは、いつもの見慣れた法廷だった。
先ほどまでの灰色一色の世界とは違い、辺りに鮮やかに“色”がある。
ふと近くを見ると、依り代となったブルーとロブが
命からがらという体でメロディたちに介抱されていた。
言葉を発することさえままならないようだ。
「最初にしては、随分と真実の近くまで行かれたようですね。
期待以上でございます。」
「・・・・うるせぇ。」
ジュードに助け起こされながら、なんとか法壇の席へと座る。
足はまだ宙を浮いているような心地がするが不思議と頭は冴えわたっていた。
「被告人と原告をこれへ!」
裁判長であるアケチの言葉にオオカミと赤ずきんが入廷してきた。
今にも泣き出しそうな可憐な乙女と、貧相でキョドついているオオカミ。
“禁断のマッチ”を使わなければ
俺はまんまとこの二人に騙されるところだったのだ。
被告人と原告が席につくなり、
ジュードが重々しい口調で事の次第を伝える。
「アケチ様は、公平な判決をくだすために“禁断のマッチ”を使用されました。」
「禁断の・・・マッチ?」
オオカミは意味を理解していないようだったが、
赤ずきんの方はアケチを睨みつけた。
「卑怯よ、そんなの!」
「おいおい、さっきまでのしおらしい少女はどこにいったんだ?」
あきれてドローが口を開く。
呼吸を整え、俺は今見てきた真実をつまびらかにする。
「赤ずきんは、わざとあの森にウサギを放した。
それによっておびき寄せたんだ。都合のいい二人を。
そしてオオカミを犯人に、猟師を第一発見者に仕立て上げた!」
オオカミは心底驚いた顔を見せた。
トーチたちもあまりのことに息を飲んでいる。
赤ずきんは、鼻で笑いながらオオカミを蔑むような眼で見る。
「この世に偶然なんか、ひとつも無いのよ。哀れなオオカミ。」
それでもオオカミは震える声で懸命に言った。
「ぐ、偶然なんか無くったっていい。僕にとっては君に出会えたことが
たったひとつの奇跡だ!」
検察官のロブがオオカミを見やり、アケチに何かを言いかけてやめた。
先ほどまでオオカミの依り代だったのだ。まだ気持ちがリンクしているのだろう。
ブルーの方は赤ずきん本来の姿の衝撃が強すぎたためか、
真っ青な顔でまだ立ち上がることすらできずにいる。
「アケチ様、判決を。」
ジュードに促されたが、俺は釈然としなかった。
「なぁ、オオカミ。
そんな結論なら、出所してきてまでわざわざ訴える意味がない。
獄中ってのは想像よりはるかに辛いもんだ。
考える時間が無限にある。考えに考え抜いてここに来たはずだ。
勝ち目がない裁判をやるほどお前はバカなやつにも見えない。
まだ本当のことを言っちゃいねぇだろ。
どうなんだ、オオカミ!」




