【第1審】~18~
・・・・・苦しい。
炎の熱さが容赦なく襲いかかる。
だが、これで終われない。
アケチは“禁断のマッチ”の炎を高くかかげた。
「はぁ…はぁ…はぁ… 燃えろ…燃えろ…燃えろ!
まだ真実はあるはずだ!」
頭の中で鳴り響く、羅列された断片的な情報たち。
走馬灯のようにぐるぐると回る。
先ほどまでの法廷の様子が、俯瞰で展開され
あたかも古いフィルムのごとく滲んでは消える。
ロブ、ブルー、ジュード、ドロー、メロディ・・・・・
『我々は赤ずきんを偽証罪で訴えます!』
『平気で自分の子供を放置し、虐待する母親が一定数いるのも事実だ!』
『そこで偶然赤ずきんに出会ったのですね?』
『なぜ母親がお婆さんを殺す必要があるんです!』
『これは明らかなる印象操作だ!』
『この方は伝説の弁護人、ドロー様です。』
『困りましたね。どうしてまだこちらに留まっていらっしゃるんです?』
『もんちゃ~ん♪ミュージックスタート!』
『まぁまぁまぁ。いいじゃないの。弟に会えたら帰るからさ。』
アケチは最後の力を振り絞る。
「マッチよ、まだ見せてない真実があるだろう!
照らせ!すべてを炙り出せ!」
残り少ない煙は、はっきりと像を結ぶことさえ難しく
時間軸も空間さえもバラバラに浮かんでは消える。
『金はどうしたんだい?こんなものでごまかそうってのかい?』
おばあさんがぶどう酒の瓶を壁に叩きつけた。
瓶の欠片は飛び散って煙とともに消えていく。
『ああ悔しい!あたしの人生、こんなはずじゃなかった!』
『お母さん…』
『お前はあたし。小さい頃のあたしなのよ。ほら、赤い頭巾がこんなに似合ってる。』
『お母さん…』
『わかるでしょう?人生をやり直すにはあの女が邪魔なの。
このぶどう酒を飲ませるだけでいいの。』
『お母さん…あのね…』
『言うことが聞けないの?!あんたまであたしをバカにして!』
何度も何度も手をあげられ続ける赤ずきん。
『お母さん…お母さん…ごめんなさい。』
最後の方は霧がかすむように見えなくなった。
『最近、森の近くで急にウサギが捕れるようになった。』
『僕は随分と甘やかされて育ったようです…』
『獲物はご両親がいつも獲って来てくれていた。』
『親御さんに大切に大切に育てられたから。そうですね?』
『どうして、頭巾はそんなに真新しいのに、君が着ている服はボロボロなの?』
脳内で反響する言葉たちを、必死でたぐり寄せる。
こんなに身体も精神も酷使しなければ扱えないものだと知っていたら
絶対にマッチなんか使わなかった。
ジュードのやつ許さねぇ!
そう思いながらも極限状態で疑問を並べる。
赤ずきんがウサギを森に放していたのは何故だ。
死因は刺し傷。供述書に書いてなかったのは何故だ。
『“上”からの意向が働いたんだよ。』
ジュードの声が甦る。
ダメだ…もう限界が来ている。
真っ逆さまに落ちていく感覚。
暗闇が迫ってくる。
真実の中枢まであと少しだったのに。
これまでか・・・
くっそぉ! “上”ってどこだよ、ジュードぉぉおおおおおお!!
落ちる落ちる落ちる落ちる…………………




