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おとぎ裁判  作者: 神楽澤小虎
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19/32

【第1審】~17~


アケチはなんとも言えない気持ちになりながら一部始終を見ていた。

それと同時に真実(シンジツ)に近付くほど

身を焦がすようなジリジリとした痛みが襲う。


マッチが燃え尽きる前にこの世界から脱出しなければ。

おそらく、()(しろ)となっているブルーやロブにも限界が近づいているはずだ。

もはや、二人の会話が上手く聞き取れない。


「僕は君の本当の君を見たい。だから、その服を脱いで。」

「どう…して?」

「生まれ変わるためにだよ。脱いだ服は暖炉にくべて。

 もう君には必要ないんだから。 だって君は… 」


痛みに耐えきれず一瞬意識が遠のく。

「ジュードの野郎、マッチが消えるまでに戻らなかったらどうなるか

 説明なしかよ!」

あいつのことだからわざとかも知れないと思いつつ

意識を元の世界に戻そうとしたその時、

少し先から猟師がこちらに向かっている姿が見えた。

窓を背にしていたオオカミには見えなかったが、

赤ずきんは猟師の姿をはっきりと認め

微かに口角をあげたのをアケチは見逃さなかった。


まだ、この先に本当の真実(シンジツ)はある………!



オオカミは赤ずきんの肩に手を置いてさらに言葉を続けた。

「例え世界中の人たちが君を悪く言っても、僕だけは絶対に裏切らない!」

熱い言葉に少しはにかむように赤ずきんが言う。

「ねぇ、オオカミさん。

 嘘じゃないって証拠に…そうね、自慢の牙を見せてくれる?」

「牙を?」

「そう。そんなこと言って油断させてガブリ!と

 食べちゃうなんてことがあるかも知れないでしょ?

 世間はそんなにやさしくない。わかってるもの。だから証拠が欲しいの。」

「いいよ、そんなことで信じてくれるならおやすいご用さ。」


なんて可愛らしいんだろう。

ただこの子は信じられる大人が欲しいだけなんだ。

精いっぱいの虚勢を張って、

自分を殺めてしまう可能性がある牙の前に身をさらし、

僕を試したいんだ。


オオカミはできる限り大きく口を開けた。

赤ずきんはそれを覗き込んで言った。


「本当に大きな口なのね!  そして、なんてマヌケヅラ。」

「!?」


絶妙なタイミングで猟師が窓の外を通りかかる。

赤ずきんが大きく息を吸った。


「助けて~! オオカミに食べられちゃう!」

「赤ずきん、冗談はやめてくれな…」


すぐさま猟師が勢いよくドアを開けて入って来る。

「お願い!!助けて!!」

赤ずきんは猟師の後ろに回り込んだ。

猟師は凄惨な状況を見て、すべてを理解したという顔をする。


「悪いオオカミだ!捕まえろ!」

「い、いや、あの僕は…」

銃声を聞きつけ、すぐさま人が集まりオオカミが捕らえられる。


誰もオオカミの言い訳を聞くものはなく、

あっという間にきつく縄で縛りあげられた。


(ああ、その時赤ずきんはそっと僕だけにわかるように

 こぼれるような笑顔で微笑みかけてくれたのです。)






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