お買い物
「あぁ、なんか勝ち組になったような気分だーー」
自分がアニメショップでカップルを見かけたときには「リア充がこんなとこ来んじゃねえよ」などと思ったものだが、いざその立場になってみると、周りの同類に勝ち誇ってやりたい気持ちが抑えきれない。
しかし何というか、男共の視線が些か敵意を滲ませたものに感じられる。四面楚歌な状況に、「少し自重すべきか…」と亮は考えを改めることにした。
「二人はいつもどんなもの買うの?」
振り向きざまに、後ろの二人に亮が問いかける。
「特に決まってないかな。適当に店内を物色して目についたものをレジに持ってく、みたいな感じだから」
場が彼女の精神を昂ぶらせているのか、結は普段よりも饒舌になっている。口調も軽やかで、それが彼女の期待を物語っていた。
ただ、いつまでも店の目前で立ち止まっていてもしようがない。三人は店の奥へと進んでいった。
ライトノベル、漫画、関連グッズのコーナーと進んでいくうちに亮はあることに気がつく。
ーーあのスペースはーー
次に見えてきたコーナーは、男が入ることを許さない強大な圧力を放っていた。
女性向け同人誌コーナー。
和気藹々とそれらを手にとって言葉を交わす夏帆と結に対して、亮は無言でその場から引き返した。あの不可視境界線の先には、魔の巣窟が広がっているーー。彼女らの品定めが終わるまで、亮はしばらく待っているしか無さそうだった。




