してもいいのはノノとだけ
「それではまず、ルールを決めましょう。ほむら先輩が可愛い顔をしているとノノさんが判定したら私の勝ち。時間切れでノノさんの勝ち。制限時間は……そうですね、15分としましょうか。異議はありますか?」
「うん、だいじょうぶ! ノノ、ちゃんと正々堂々判定するからね!」
「あの、いいかな? 15分ってちょっと長く――」
「では勝敗の定義が決まりましたので、次は禁止事項の確認ですね」
どうやら本格的に僕の影は消えかけているらしい。シュシュだけでなく、ノノも僕の異議申し立てに聞く耳を持っていない……いや、聞こえなかったのだろう。僕の声が小さすぎたのだ、そうに違いない。
「はい! はい! えっちなのは禁止!! ぜったいに! シュシュちゃんはせんぱいにえっちなことしちゃダメ!!」
「くすっ♡ そこまで強調しなくとも、ノノさんを差し置いてそんなことはしませんよ? ……まあ、ほむら先輩から求められてしまったら、私としてもやぶさかではありませんけどね……♡」
「せんぱい? ダメだからね? ぜったい、ぜったいだよ……ほんとだよ? いくらせんぱいが、えっちが大好きなへんたいさんでも……ダメだよ?」
ようやく存在を認知されたかと思ったら、変態扱いされてしまった。さっきまでは勝負への自信に満ち溢れていたのに、僕のえっちへの弱さにも余程の自信があるのだろう。
僕を見るノノの瞳は不安そうに揺れて潤んでいる。
ノノの不安を少しでも和らげてあげたくて、できる限り頼もしく聞こえるように「大丈夫だよ」と返事をしてみせた。
「約束だよ……? その……そういうのは、大きくなってからノノとしようね?」
ノノは俯きながらも視線は僕から外さぬように上目遣いで、頬が赤らんでいる。
もう、この勝負は僕の一人負けでいい。心からそう思えた。
「ふふっ、おふたりの仲が良いようで何よりですね。勝負が決着した後も、その仲睦まじいやり取りが見られることを期待しています。禁止事項はえっちだけで良いですか? 他のことであれば何をしても良い……そう解釈してしまいますが……♡」
「んー……じゃあ、お耳を食べるのもだめ! 痛いことするのもだめで……あとは、ちゅってするのもダメ! 手を繋ぐのもダメ……あとは、あとは……」
「ふふっ……いいですよ。ノノさんが今仰ったものは全部禁止ですね。それと、勝負中も禁止事項は随時増やしてもらって問題ありません。ほむら先輩はノノさんの恋人ですから、勝負であろうとも私の行動は制限されてしかるべきです」
シュシュは余裕の笑みを浮かべたまま、自分が不利となるルールを呑み込んでみせた。
やはり、シュシュは本気で勝つ気はないという理解で合っているのだろうか。最終的にはノノに花を持たせるつもりで、この勝負もあくまでお遊びのつもりなのかもしれない。
「それでは、勝負を始めましょうか。制限時間は15分。このスマホのアラームが鳴るまで……ほむら先輩、がんばってくださいね♡」
「せんぱい、いつも通りかっこよくね!」
「う、うん……」
かっこよさに自信は無いけれど、シュシュが本気じゃないのなら身構える必要も無いだろう。むしろ、あの廊下ですれ違った時のように気を利かしてくれるのかもしれない。僕がノノにカッコイイところを見せられるように――
「では私の第一手は……呼吸管理とさせていただきますね……♡」
――どうやら、シュシュに手加減するつもりはないらしい……。




