仲の良いふたり……?
「しかし、結局ほむら先輩を堕とせなかったのは少しショックですね。受け入れていただくところまでは入りこめたのですが、先輩から求めていただくことは叶いませんでした」
「ふふ、シュシュちゃん……ノノは、あるよ? せんぱいから、求められたこと……あるよ?」
「くすっ、いじわるな言い方ですね。いじわるをされたら、仕返しをしたくなるのが人の性……ノノさんのスマホの待ち受けを、私とほむら先輩のツーショットにして差し上げますね♡」
「あっ、やだ! やめてー! ノノスマホ得意じゃないんだから! 変えられたら変えられなくなっちゃう!!」
きゃあきゃあと姦しくやかましいノノとシュシュ。普段も白シャツを擦り合いながら、仲睦まじくじゃれ合っているのだろうか。どうして僕はこのふたりと同じクラスではないのかと思わずにはいられない光景だった。
3人で謝り合ってわだかまりが消えた後は、当初の予定通り勉強会が始まった。リビングから持ってきたテーブルに自室のテーブルを合わせて、3人分の問題集とノートをはみ出しながらも広げている。
クラスが同じふたりは数学を勉強中であり、ノノは度々シュシュの袖を引っ張っては解き方を教えてもらっている。僕は若干輪から外れている感じはあるが、慣れているので気にならない。むしろふたりが仲良く触れ合っている光景は、色々と捗りさえした。
「あれ……ノノさんの待ち受け、ペットですか? 可愛いワンちゃんですね」
「うん、コマっていうの。レトリーバーだよ。可愛いでしょ♡」
「はい、とても♡ ただ、少し意外です。てっきりほむら先輩の画像かと思っていたので」
「だって、人に見られたらせんぱいと付き合ってるってバレちゃうかなって……ないしょだもんね?」
唇の前で人差し指を立てて、僕に目配せをするノノ。いたずらっぽい笑みを浮かべており、僕とは違って秘密にしていること自体を楽しんでいるように見えた。
「それなら、私も含めた3人の画像にするのはいかがですか?」
「シュシュちゃんも……? 確かにそれなら、ノノとせんぱいのことはバレないかも……」
「もしくは、3人がそれぞれの自撮りを待ち受けにするというのもあるかと……私がノノさん、ノノさんがほむら先輩、ほむら先輩が――」
「3人でいっしょに撮ろ♡」
ノノはシュシュの胸に飛びつき、僕に向けて手招きした。
シュシュが上へと構えたスマホのインカメラに入るように、僕も屈みながらノノの腰辺りに近寄る。
「これでは私とノノさんがお付き合いしているようですね?」
ノノとシュシュは狭い画面に収まるように互いに抱き寄せ合っている。確かにこれでは、僕は何故かカップルの写真に入り込んでいるモブだろう。
僕としてはそれでも良かったけれど、ノノは納得いかないようだ。
「せんぱい、もっとかっこいいお顔して? ノノ、かっこいいせんぱいを待ち受けにしたいな?」
いきなりそんな注文をされて応じることができるのはよほどのイケメンか、もしくはひょうきんな人だけだろう。
残念ながらそのどちらでもない僕はインカメラの中で百面相をすることになり、クスリと笑ったのはシュシュだった。
「難しいのなら、可愛いお顔にはどうでしょう。そちらのほうがほむら先輩らしいですし」
より無理難題になってしまった。情けなくても一応男ではあるのに、可愛い顔なんて求められても取っ掛かりすら掴めない。
どうしたものかと困っていると、画面の中のノノが不満げに唇を尖らせているのが目に入った。
「ぶー……ノノは可愛いせんぱいで写真撮るのイヤだな……。だって、可愛いせんぱいはノノだけの特別だし……♡」
「え?」
「……え?」
ノノとシュシュは不思議そうな顔でお互いに顔を見合わせていて、僕は嵐の前兆を感じていた。




