秘密の関係
「のの……えっ、ノノ!? ノノ君からのお願いって言った今!?」
突然の告白に僕が驚愕している一方で、シュシュは穏やかに綿棒を操っていた。
「最近、おふたりは会えない日々が続いていたそうですね? そのせいで、ノノさんは不安になってしまったんですよ……ほむら先輩が別の男の子にうつつを抜かしていないかって。ノノさんご自身は奔放なところがありますが、意外と独占欲がお強いのですね♡」
「ノノ君が……そうだったんだ……。僕、こんなに好きなのに……まだ足りないのかな……伝えてるつもりなのにな……」
「いいえ、そこはノノさんも心配していませんでしたよ。ほむら先輩の恋慕の情はノノさんご自身が一番理解し、体感しているそうです。ただ……」
「ただ……?」
シュシュは僕の耳から綿棒を引き上げると、上半身を起こした。そして僕を見下ろしながら、意地の悪い笑みを浮かべると――
「せんぱいはすぐにえっちなことをしたがるから、誘惑されたらすぐに負けちゃいそう……とのことです♡」
「うぐっ……そ、それは……」
ノノの不安が杞憂だったかどうかは、今のこの状況を見れば火を見るよりも明らかだ。
腰の上に乗るシュシュを押し退けることもしなければ、退いてと言うこともなく、その下半身の柔らかさに意識が持っていかれている始末なのだから。
「今回のことは全てノノさんに報告させていただきます。密着する私を押し退けなかったこと。私に頭を撫でさせたこと。謝罪で気持ちよくなって、呼吸管理にも素直に従ったこと。あと、お耳も好きにさせていただけましたね……ああ、そうそう。耳かき中の粗相も、忘れてはいけませんね♡」
こうやって並べられると、僕の負けっぷりが凄い。内心ではギリギリ負けてないつもりだったのに、最後のなんて敗北以外のなにものでもない。
「誘惑している私目線でも、ちょっとどうかと思う弱さですよ? ねえ、ほむら先輩? 反省されていますか? ほら、ほらほら……♡」
「あっ……うぐっ……それっ、だめっ……苦しいからぁっ……」
綿棒とクリームを片づけながら、僕のお腹の上で跳ねるシュシュ。それは体重をかけていない、腰だけの体重移動だったけれど、腹筋が皆無な僕のお腹では十分苦しかった。
「声が嫌がれていませんよ? 先輩なのですから、後輩のことはちゃんと躾けないと……止めてって、言えますか? 幼稚園児の皆さんだって、先生から教わっていますよ? ほら、言ってみてください……やーめーて♡ ほら♡」
「うぅっ……っ……だっ、だめぇっ……」
「重症ですね。まったく、ノノさんに報告する私の身にもなってください?」
「あうっ……」
シュシュは再び僕の上にのしかかってきた。僕の胸に胸を預けながら、指先で僕の鼻先をつついている。
「……ないしょにして欲しいですか?」
「えっ?」
「今日のこと、ノノさんには内緒にして差し上げてもいいですよ? ほむら先輩は私からの誘惑を毅然と退けた……条件次第では、そう報告してあげなくもありません」
「……じょ、条件って?」
シュシュはクスリと笑うと、僕の右耳に唇を寄せた。保湿された耳に、シュシュの熱っぽい吐息が当たる。
「私との友達関係を辞めること……言っている意味、わかりますか?」




