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あまあまでサドサドな男の子たち  作者: papporopueeee
放課後の教室デート編

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天にも昇るような衝撃は、下から

 ノノは俯く僕の顎に左手を添えて、優しく僕の視線を持ち上げた。そして左耳を軽く撫でてから、つむじを掌で包むように撫で始めた。


「でもでも……カッコいいね♡ せんぱい、ノノの前でカッコつけようとしてくれたんだもんね。カッコいいよ、せんぱい♡ 最後までカッコつけていられないのはかわいいけどー、それでもノノはカッコいいと思う。ノノね、せんぱいのそういう所が好きなんだー♡」


「そ、そうなの?」


「うん! だって、カッコいいもん! ノノ、カッコいいせんぱいのことだーいすき♡」


 ノノの論理は僕には理解できないけれど、その好意が本物だということは伝わってくる。頭ではなく心に直接伝わる感情は僕には刺激が強すぎて、さっきから体中が火照ってしまって仕方がない。


「カッコいい、カッコいいよせんぱい♡ カッコいい♡ すっごくカッコいい♡」


「あっ、う、うん……」


 両親でも、先生でも、同級生でも、誰かに褒めてもらえたら誇らしい気持ちになれるのに、ノノに褒められた時だけはいじわるをされているような心地になってしまう。それなのに僕はこのいじわるを嫌なものとして認識できていなくて、もっと欲しくて仕方が無い。ノノにいじわるをしているつもりなんてないものだから、されるがままでいたらずっと終わらないのだろう。


 純粋な気持ちで褒めてくれているノノを見つめ返すことができなくて、僕は顎に添えられた左手から逃げるように床へと目を逸らしてしまった。しかしノノはそれが不満らしく、すぐさましゃがみこんで僕の視線に映りこんできた。


「せんぱい、どうして逃げちゃうの? カッコいいって言われるの、嫌なの?」


「嫌というか、その……て、照れくさくて……」


「恥ずかしがらなくてもいいよー。ほらほら、こっち見てせんぱい。カッコいいせんぱいのこと、ノノにたくさん褒めさせて?」


「あっ、ちょっと! だ、ダメだよ、ノノ君! そ、それはダメっ――っ!」


 両膝をくっつけて閉じた僕の脚の間に、ノノが小さな体を潜り込ませてきた。どうしてもくっつけられないふくらはぎの間を入口として、指先から手首、二の腕、肩と徐々に広げられては僕には成す術も無い。


 脚の間から顔をぴょこんと覗かせて、ノノは僕を下から覗き込んだ。自分が今どんな格好をしていて、僕からどう見えているかなんて、少しも気付いてもいない無邪気な笑顔だった。


「えへへー、優しいねせんぱい。お口はダメって言ってても、脚はよわよわ……ノノが痛くないようにだよね? せんぱい、カッコいい♡ カッコいい……カッコいいっ♡」


 椅子に座る僕の脚の間から顔だけを出して、ノノはカッコいいと褒めちぎる。その気持ちの大きさを表現するような声と、その勢いをそのまま乗せたように息が、僕の体にぶつかっていた。


「わ、わかったっ、わかったからっ……それ、もうダメだってっ……っ」


「ダメじゃないもん。だって、せんぱいはカッコいいんだから。どんな時でも、せんぱいはノノのことを一番に考えてくれてて……ノノのためにカッコつけようとしてくれてて……そんなことしなくても、ノノはせんぱいのこと大好きなのに……♡ せんぱい、カッコいい……♡ カッコいい、カッコいい、カッコいいっ♡ せんぱいはカッコよくてぇ、カッコよすぎてぇ……な、なんだか、ノノまで恥ずかしくなってきちゃったかも?」


 僕の視線から隠れるように、ノノは少しだけ脚の下に潜りこんだ。口から下が埋もれて、鼻先が僕の太腿と同じくらいの高さになって、真っすぐに見上げてくれていた視線も下がっていく。


 そしてようやく、ノノは今の僕たちの恰好に気付いたようだった。


「あっ……えっ――」


 ノノの視界は黒一面になっているだろう。言うまでもなく、僕が着ている学ランの色だ。ベルトが見えているかはわからないけれど、チャックは見えているかもしれない。それ以外は何も見えていないことを祈る他ない。


 教室に居る僕を見つけた時よりも大きく、ノノの瞳が見開かれていく。動揺の大きさを示すように鼻先がヒクヒクと動く。心臓から上ってきた血液が耳まで真っ赤に染めていく。


 下腹部、おへそ、胸、鎖骨、首、顎、唇……体を上って来るノノの視線から逃れるように、僕は視線を逸らした……逸らすことしかできなかった。


「っ――うきゃああぁぁぁっ!?」


 おそらく、ノノは悲鳴を上げながら立ち上がったのだろう。僕の脚に挟まった状態で、遮二無二距離を取ろうとしたに違いない。


 そうでないと、この浮遊感に説明がつかない。そう考えれば、僕が天井を見ていることにも説明がつく。


 小柄な僕の体はもっと小柄なノノによって持ち上げられて、そのまま椅子ごと後ろに倒れたのだった。

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