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あまあまでサドサドな男の子たち  作者: papporopueeee
自室でふたりきりだけど浮気じゃない編

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33/55

いっぱい取り込んで、たくさん浸されて

 そこは隙間だ。結われて揺れる艶やかな黒髪と、シャツの襟から伸びるうなじの間。人のフェロモンが最も濃いと言われる、首の後ろに出来た空間。


 シュシュは僕の後頭部に右手を添えると、ぐいっと自身の首元へと引き寄せた。鼻先が襟足にくすぐられる近さは、呼吸をすればシュシュの匂いを取り込んでしまう距離だ。僕の意志に関わらず、生理現象にシュシュが入り込んできてしまう。


「先輩、どうされました? もうお忘れになってしまったのですか? 私はとっくにほむら先輩に命令していますよ……たくさん、吸ってください♡」


 でも、という時間稼ぎも言葉にならない。声を出すには結局のところ酸素が必要で、まずはシュシュの言うとおりに呼吸を再開しなければならない。

 抱きしめられているから押し退けることもできない。シュシュに堕ちかけている体では、抱擁から逃れる選択肢を選べない。


「我慢してはダメだと教えたでしょう? 私の言うことを素直に聞いてくれないと、嫌ですよ? ほら、先輩……吸って♡」


 これは仕方ないことだ。だって死んでしまう。呼吸は生きる上で必要不可欠だ。

 だから、僕は息を吸った。結果的にシュシュの命令通りに、鼻から大きく、ゆっくりとたくさん、シュシュの首元の匂いを吸い込んだ。


 湿気と熱気で汗をかいたシュシュの匂い。きっと普段よりもずっと濃いシュシュの匂い。香水と混ざりあったその匂いを嗅いでいると体が熱くなってきて、思考がくらくらとして……多分、大人が酒に酔うのってこんな感じなのだろう。


「ふっ、ふふっ……少し、こそばゆいですね……♡ でも、上手ですよ……♡ もっと、くんくん♡ たくさん、すんすん……♡ 先輩の呼吸が上手だから、私もなんだか変な気分になってきちゃいました。もう少し続けましょうか。吐いてー……吸ってー……止めて♡」


 肺の隅々まで、シュシュのフェロモンが行き渡る。酸素と一緒に血流に乗って、体の隅々までシュシュの成分が行き渡っていく。

 早く次の呼吸がしたくて堪らない。次の命令が待ち遠しくて、もどかしくて、僕はおねだりするように身を捩ってしまった。


「んっ……ふふっ……もう、ほむら先輩はせっかちですね♡ そんなにもぞもぞと動かれては、くすぐったいですよ……♡ さあ、吐いてー……♡ 吸ってー……♡」


 これは、息を止めていたせいだ。シュシュのせいで酸素の循環が足りていないからだ。シュシュのゆったりとした管理ではじれったくて仕方がなくて、呼吸のペースが上がっていってしまう。


 しかし、そんな僕の身勝手で我儘な暴走も、シュシュは片手で制してしまう。


「だーめ♡ ダメですよ、先輩? 焦ってふがふがしてはダメです……ちゃんと、私の言う通りに……そうです……いいこですね……♡ えらいえらい♡ 私の言うことを聞くのは、気持ちがいいですね……♡」


 ただ右手で後頭部を撫でただけ。優しくも強く、頭皮に指を立てるように。それだけのことで、従わなければという強迫観念と、従いたいという欲望が身体に満ちていってしまう。


 もしかして、僕の身体は……とっくのとうに、変なことになっちゃってる……?


「いいこ♡ いいこ♡ 先輩は何も考えなくていいんですよ……♡ ただ、私の言うとおり、言葉のとおりにしていれば、勝手に気持ちよくなれるんですから……♡ さあ、次は横たわりましょうね♡」


 シュシュが僕の身体を支えながらも体重をかけてくる。脳と体の両方に圧力をかけてくる。


 もはやその行為の意味もわからないまま、シュシュを上に乗せたまま、僕は自室で仰向けになって――


 ――ピッタリとふたりの胸が重なった状態では、心音の区別もできなかった。

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