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あまあまでサドサドな男の子たち  作者: papporopueeee
自室でふたりきりだけど浮気じゃない編

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呼吸管理

「くすっ♡ こんなに体を震わせて、寒いのですか? もっとぎゅっ♡ と抱きしめて、人肌で温めてあげないといけないでしょうか♡ 呼吸も乱してしまって……まったく、仕方のない先輩ですね♡ 私が呼吸の音頭を取って差し上げます……さあ、吸ってー♡ 吐いてー……♡」


 シュシュの胸に抱かれたまま、その胸の上下に合わせて深呼吸をする。従う意思すら介在しないままに、シュシュの言う通りに体が動く。


「大きく胸を膨らませるように、鼻から息を吸ってー……♡ 全身をしぼませるように、ゆっくりと時間をかけて吐いてー……♡ 上手ですよ、先輩♡ 先輩は呼吸をするのが上手、上手♡ その調子でがんばりましょうね♡」


 息を吸えば、空気と一緒にシュシュの匂いが入り込んでくる。香水をつけているのか、花のような香りは心地良く、思考がシュシュで満ちていく。


 息を吐けば、空気と一緒に僕の中身が抜けていく。我慢とか、理性とか、シュシュに対抗するためのものが失われていく。


 言われるがままに吸っては吐いて、褒められるままに喜んで。段々と難しいことが考えられなくなってきて、徐々に気持ちいいことしかわからなくなってきて……その時だった。


「吸ってー……止めて?」


「えっ……?」


 ピタリと呼吸が止まった。正確には、止めさせられてしまった。

 シュシュの言葉に従うことに慣れ過ぎていたのか、戸惑いながらも僕は律儀にその指示に従ってしまっていた。


「? ……?」


 シュシュの意図がわからなくて、聞き間違いさえ疑った。これで合っているのか不安だったけれど、息は止め続けた。

 恐る恐る顔を上げて様子を窺ってみると、シュシュは満足げに微笑んでいた。


「いい調子ですよ、先輩♡ もう少しだけ、あとちょっとだけ……がんばりましょうね♡」


 どうやら合っていたらしい……間違っていて欲しかったけれど。


 困惑は次第に苦悶へと変わっていく。体内に密閉された酸素が逃げ場所を求め、締めた喉が熱くなってくる。心臓の鼓動が警告のように大きく響き始める。


 まさか、気を失うギリギリまで止めなければならないのだろうか。

 恐怖の芽が顔を出したと思った矢先に、シュシュは顔を綻ばせて僕を解放した。


「はい、吐いてください♡ いいこですよ、先輩♡ よく私の言う通りに我慢できましたねー♡ すごいです……♡ いいこ、いいこ♡」


 シュシュは僕の首に抱き着くと、少し大げさなくらいに僕を撫でまわした。後頭部に右手を回してワシワシと、背中に左手を回してサスサスと。息を止めていたのはたった数秒なのに、まるで世界記録でも達成したかのような誉めようだった。


 もっと我慢できたら、次はもっと褒めてもらえるのだろうか。そう考えてしまうのは、きっと僕だけじゃないだろう。


「それじゃあほむら先輩、もう一回やってみましょうか。吸ってー……♡ 吐いてー……♡」


「すー……はー……」


「上手♡ 上手な呼吸ですよ、先輩♡ 吸ってー……吐いてー……吸ってー……止めて♡」


 ほんの少しだけズルをして、指示を出されたワンテンポ後に止める。シュシュがさっきと同じタイミングで吐く指示を出すのなら、プラスで5秒は止めていられるだろう。


「いいですよ……先輩、もう少しだけ頑張りましょうねー……♡」


 やっぱり、シュシュは僕を侮っている。それとも、危険だから余裕を持たせているのだろうか。

 シュシュの期待を上回った時のご褒美に思いを馳せながら、僕は息を止め続けた。


「はい、吐いてください♡ ……ほむら先輩? 聴こえてますか? 吐いてください? 先輩?」


 シュシュの指示を無視して息を止め続ける。体全体が熱くなってきて、もやがかかったように思考がぼやけてきて、視界も暗くなってきて、でもあと2秒くらいなら――


「はぁ……勘違いされては困りますよ、先輩?」


 口は笑っているはずなのに、目が笑っていなかった。

 言葉は優しいはずなのに、声色が優しくなかった。

 シュシュは僕にマジギレをしていて――


「ぷしゅぅ…………」


 ――その剣幕にビビった僕の口からは、情けなく空気が漏れ出ていくのだった。

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