仕上げはぐりぐり、ごしごし、ずぽずぽ
しばらく話した後、ノノは僕の耳から離れた。結局、舌が耳に触れていることには気づかなかったようだ。
「ぷはっ……はい、おしまい。どうだった、せんぱい? 不思議な感じした?」
「うっ、うん……とっても、不思議だったよ……?」
この感想は嘘ではない。まだ僕の耳には色んな余韻が残っていて、なんて形容すればいいのかわからない状態だ。
耳ふうされて、嗅がれて、キスされて、唇で甘噛みされて、思いっきり噛まれもして、最後には舌でチロチロと……こしょばゆいのか、痛いのか、恥ずかしいのか、嬉しいのか、混ぜこぜになってしまっていた。
「いいなぁ、ノノもせんぱいにやってみてもらいたいなぁ……ちら?」
「うっ……こ、こんど……こんどね?」
僕が同じことをすれば、同じように舌が耳に触れるだろう。僕がわざとそれを黙っていたことにノノが思い当たってもおかしくない。
そうなれば幻滅されて、最悪見捨てられてしまうかも……ノノが忘れてくれることを願うしかない。
「あっ、せんぱいのお耳べとべと……えへへ、そうだよね。あんなにかみかみしてたら、ノノの涎ついちゃうよね。拭き拭きするね、せんぱい」
今までのどれとも違う、さらさらとした繊維の感触が耳を撫でる。耳の裏、耳たぶ、耳の溝。マッサージでもするように、ノノはハンカチで丁寧に耳を拭いていく。
直接ノノが触れるよりは刺激は弱いけれど、それはそれで心地よかった。涎と一緒に余韻も拭ってくれているようで、色々とあって体力を消耗しているせいもあってか、眠ってしまいそうだ。
「中も一応拭いておくね、せんぱい」
「……えっ?」
穴の縁をなぞっていたノノの指が、突然その先端を突っ込んできた。
「ひゃわっ!?」
「あっ、動いちゃだめだよ、せんぱい。大人しくしてて? 急に動いたら、お耳に怪我しちゃうよ?」
そう思うなら、せめて確認を取ってから入れて欲しかったけれども。
ハンカチにくるまれたノノの指が、我が物顔で僕の耳の内側を往来する。優しくはあるけど無遠慮に、丁寧ではあるけど加減はない。綺麗にするという大義のもと、ノノは僕の耳の粘膜をずっぽずっぽと擦った。
「動かないでね~……そう、いい子だよ~せんぱい。ビクビクもしちゃだ~め。もうちょっとで終わるから……仕上げにぐりぐりってして~……うん、キレイになった! もうべとべとじゃないよ!」
「あ、ありがとう……ハンカチ、洗ってから返すよ」
「気にしないでいいよ? お母さんに洗ってもらうもん」
「いや、気になるよ……その、あんなに奥までゴシゴシしてたら……よ、汚れちゃったでしょ?」
「せんぱいの耳垢のこと? 大丈夫だよ、ゴミ箱の上でぱっぱってしたら落ちるよ。ほらっ、もう綺麗になった!」
「そ、そう……ノノ君が気にしないなら、僕も無理にとは言わないけど」
「それよりせんぱい、はやくしよ? 本当に帰る時間になっちゃうよ!」
「え? す、するって……何を?」
元々は手を繋いで帰るのが目的だったけれど、ノノが意図しているのは別のようだ。しかしそうなると、僕には思い当たることはなかった。
えっちなことをノノが望むはずがないし、唇へのキスも拒絶されている。そうなると、ノノが言っているのはハグになるだろうか。もちろん、僕もハグはしたいけれど……でも、初ハグをする心の準備がまだ――
「次はせんぱいの番でしょ? ノノがせんぱいにしたこと、今度はノノがしてもらう番♡」
――僕もするの?




