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あまあまでサドサドな男の子たち  作者: papporopueeee
放課後の教室デート編

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お耳のそばで、吐いて、吸うだけ

「いくよ? ……ふー♡」


「~~っ!!」


 まるで息を吹き込んで鳴らす楽器のように、耳に吐息がかかる度に体が強張って喉が震えてしまう。ただ、楽器としては致命的に質が低く、音程は安定しないし、音も震えているし、擦れた吐息しか出ないこともある。

 でも、ノノはそれが気に入ってしまったらしい。壊れかけの玩具の楽器に唇を寄せて、楽しげな声を漏らしていた。


「ふー♡ ふー♡ お耳もキレイキレイにしていきまちょうねー♡ よちよち♡ 震えなくても大丈夫でちゅよーせんぱい♡ ちゃんと優しくするから……ふー♡ あははっ、お耳がどんどん赤くなっていくね? ノノがふーってするだけでどんどん真っ赤になって、ビクビクって震えてて、爆発しちゃいそう……ノノ、これじゃあキスできないよ? せんぱい、もっとがんばって♡ ノノがあちあちのお耳冷ましてあげるからね。ほら、ふー♡ ふー♡」


 指先で耳の溝をなぞるように。爪で耳たぶをカリカリと弄ぶように。ただの耳ふうなのに、僕はスライムみたいに全身が融けていく心地だった。


「ふー♡ ふーっ♡ はい、おしまーい。ノノがたーっくさんふーってしたから、せんぱいのお耳キレイになりまちたよー♡ えらかったでちゅねー♡ がまんできまちたねー♡ がんばって耐えてるせんぱい……カッコよかったでちゅよー♡」


 ノノは純粋に褒めてくれているのに、馬鹿にされているようにも感じてしまう。今の僕の頭ではこの矛盾が上手く処理できなくて、心に取り返しのつかないバグが生まれてしまいそうだった。


「それじゃあ、キレイになったお耳の匂いをチェックしていくね……すんすん。くんくん……すん、すんすん……くん…………あれ?」


「え?」


「あっ、ちがうよ! くさくない! お耳ぜんぜんくさくないよ、せんぱい! ただ……? せんぱい、もうちょっとだけ嗅いでもいい?」


「う、うん……」


 閻魔大王の沙汰を待つ人は、こういう気持ちなのだろう。もしも臭かったらこんなに嗅がないはずだと自分を勇気づけながら、僕はノノが鼻を鳴らす音を間近で聞き続けていた。


「くんくん……すんすん……んー? すん……すんすん、すんすん。ふー……くんくん……くんくん、くん……?」


 吸っては吐いて、息継ぎを交えながら僕の耳の匂いを嗅ぐノノ。さっきまではふたりきりの甘いいじわる空間だったのに、いつの間に警察犬が入ってきたのだろう。


「くんくん……すー……ふー……すんすん。うん…………やっぱり、ちょっとだけくちゃい♡」


 それは、ノノと初めて会った時以来の衝撃で――


 ――中一の時のおねしょよりもショックだった。


「ちがうよ、せんぱい! くさくないの! くちゃい、だよ! それにちょっとだけだから……ほんと、ちょっとだけ……くんくん――くちゃっ♡ ってなっちゃうくらいだから! 落ち込まないで!」


 ノノなりに気を遣っているのだろう。しかしいくら語感を和らげたり、言い方を可愛くしても、事実は何も変わらない。


 ノノに耳を臭いと言われた……この心の傷は二度と癒えず、僕の体が熱を持つことも二度と無い。これからは死んだ心でロボットのように一生を終えていくのみだ。


「それにね……ノノ、この匂い好きかも……♡ くんくん♡ ふー、はーっ♡ すん、すんすん……♡ うん、くちゃい……くちゃいけど、せんぱいのお耳だからかな? なんだか、もっと嗅ぎたくなっちゃって……ごめんね、せんぱい……もう少しだけ嗅がせてね? すー♡ ふー……すんすん♡ はー♡ くんくん、くんくん……くちゃーい♡」


 どうしてだろう……死んだはずの僕の心が、再び熱を取り戻し始めていた。


「くんくん……はー♡ すん、すんすん……♡ くちゃぁい♡ くちゃいね、せんぱいのお耳……すんすん♡ ふーっ♡ くんくん……どうしよう、せんぱい……ノノ、せんぱいのお耳食べたくなってきちゃったぁ……♡」

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