【18-1】静かなる捜索と、闇の奥底
深夜の公爵邸。 豪華なゲストルームは、本来の主を迎えることなく、冷たい静寂に包まれていた。 窓の外ではフクロウが鳴いている。それを合図にするかのように、カゲロウとメルは音もなくベッドを抜け出した。
「……行くぞ。護が酸欠で倒れる前に」
「ああ。あの脳筋のことだ、中で寝ている可能性もあるがな」
二人は軽口を叩きながらも、その目は笑っていなかった。 廊下に出ると、屋敷内は不気味なほど静まり返っていた。あれほどの規模の闇市場を運営していた黒幕の居城にしては、警備兵の姿があまりにも少ない。大理石の床に、二人の忍び足の音だけが吸い込まれていく。
「……おかしい。警備が、手薄すぎる」
カゲロウが足を止め、壁際に身を寄せる。歴戦の勘が、この静けさに潜む作為を感じ取っていた。
「ああ。まるで、ボクたちを『あそこ』へ誘い込んでいるかのようだ」
メルが手元の魔力探知機を見る。針は、屋敷の地下深くを指し示して震えていた。
「だが、行くしかないだろう。この先に、ボクたちが求める『答え』があるのなら」
二人は覚悟を決め、書斎の隠し扉から続く、冷たい闇の先へと足を踏み入れた。
螺旋階段を下りきった先に広がっていたのは、おぞましい実験室だった。 鼻を突く薬品と鉄錆の臭い。壁には奇妙な生物の標本が並び、床には魔法陣が描かれている。そして、その部屋は、以前護たちが戦ったオークション会場のステージ裏へと繋がっていた。
そこには、まるで演劇の開幕を待つ演出家のように、玉座にふんぞり返るフェルディナント公爵がいた。 彼の傍らには、虚ろな瞳をした鎧騎士――アーサーと、完全武装した私兵団が控えている。
「ようこそ、薄汚いネズミ諸君。君たちなら、必ずまたここへ来てくれると信じていたよ」
公爵はワイングラスを傾け、愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
「ヴィンチ殿と繋がっていたことは少し意外だったがね。芸術家の気まぐれも、時には役に立つものだ」
「ヴィンチに手を出したら承知しないぞ!」
「安心したまえ。彼は無事だ。私は彼の芸術のファンなのでね。才能ある芸術家は、保護せねばならん」
心にもないことを言って笑う公爵に、メルは怒りを露わにする。
「さて、あの英雄殿はどこかな? それと、私の金庫から盗んでいった、大切な『薬』を返してもらおうか」
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