【15-6】起死回生の一手
テラスの上段で、その様子を眺めていたフェルディナント公爵が、不快そうに鼻を鳴らした。
「やれやれ、家の者が騒がしいと思ったら、書斎の方に薄汚いネズミが紛れ込んでいたようだね」
公爵はメルとカゲロウを一瞥すると、アーサーに冷酷な命令を下す。
「アーサー、あの大きな男は生け捕りにしろ。抵抗するなら、手足の一本や二本、へし折っても構わん。……他の者は、殺せ。特に、あの生意気な小僧は、念入りに潰しておけ」
「了解」
感情のない声と共に、アーサーが加速する。 標的はメル。 その速さは、カゲロウですら反応が遅れるほどだった。
「しまっ――!」
「メル!」
護が手を伸ばすが、間に合わない。 大剣が、メルの小さな体を両断せんと振り下ろされる。
「これでも喰らいたまえ!」
メルは懐から二つの小瓶を取り出すと、自身の足元に叩きつけた。 パァァァン!! 強烈な閃光と、視界を完全に遮る濃密な紫色の煙幕が同時に炸裂する。 錬金術師特製の、五感を狂わせる撹乱ガスだ。
「グゥ……!」
アーサーの動きが一瞬止まる。 敵の視界が奪われた、その千載一遇の好機。 カゲロウは、床に落ちていたセラフィーナの細剣を拾い上げると、アーサーではなく――公爵が立っているバルコニーへ向けて、全力で投擲した。
ヒュンッ!!
銀色の閃光が、公爵の眉間へと直進する。
「なっ!?」
公爵が悲鳴を上げる暇もない。 だが、刃が届く寸前、黒い影が割り込んだ。 アーサーだ。彼は主君を守るため、人間離れした反応速度で軌道に割り込み、ガキンッ! と甲手で剣を弾き飛ばした。
「……チッ。やはり、そちらを優先するか」
カゲロウが舌打ちする。だが、狙いは外れたわけではない。 主を守るためにアーサーが動いたことで、包囲網に致命的な穴が空いたのだ。
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