【15-1】テラスの死闘
「確保だ! 逃がすな!」
「抵抗するなら殺しても構わん!」
優雅なワルツが流れていた王城のテラスは、今や怒号と金属音が支配する戦場と化していた。 屋根から、庭園から、次々と湧き出してくる公爵の私兵団。その数は、護とセラフィーナの二人を圧殺するのに十分すぎるほどだった。
「くっ……!」
セラフィーナが苦悶の声を漏らす。 慣れないドレス姿は、彼女の動きを致命的に制限していた。ヒールのある靴では踏ん張りが利かず、大きく開いた背中や腕は、刃の前ではあまりに無防備だ。 兵士の剣が、彼女の二の腕を掠める。白い肌に赤い線が走り、美しい青のドレスが滲んだ血で黒く染まった。
「セラフィーナちゃん! 無茶すんな!」
護が、兵士をなぎ倒しながら叫ぶ。 彼は懐に手を入れると、隠し持っていた「あるもの」をセラフィーナの方へ放り投げた。
「ほらよ! これ使え!」
空中で銀色の軌跡を描いて飛んできたのは、護身用に護が持たされていた細身の剣だった。 セラフィーナはそれを空中で受け取ると、流れるような動作で構えを取った。
「護殿、これは……!」
「俺には爪楊枝みたいで使いにくいからな! あんたの方が似合うぜ!」
手慣れた武器を手にしたセラフィーナの雰囲気が一変する。 ドレスの裾を翻し、舞うように剣を振るうその姿は、戦場に咲く花のように美しく、そして鋭かった。
「助かります!」
二人は背中を預け合い、波状攻撃を仕掛けてくる兵士たちを次々と撃退していく。 しかし、敵の数は減るどころか増えていく一方だ。
その光景を、安全圏であるバルコニーの上段から、フェルディナント公爵がワイングラスを片手に眺めていた。
「素晴らしい! 実に素晴らしい力だ、英雄殿! その獣のような生命力、やはりただの人間ではないな」
公爵は、護が戦斧で石柱ごと兵士を吹き飛ばす様を見て、恍惚とした表情で賛辞を送る。
「だが、いつまで持つかな?」
公爵がくい、と指を動かす。 すると、私兵団が割れ、その奥から地響きのような重い足音が近づいてきた。 現れたのは、身長三メートルはあろうかという、巨大なフルプレートの鎧騎士だった。その全身からは、生物的な生気を感じさせない、不気味な冷気が漂っている。
「さあ、ご挨拶したまえ。わが『最高傑作』の一つだ」
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