【14-6】捕食者の笑み
メインフロアの喧騒から逃れるように、セラフィーナが護をテラスへと連れ出した。 夜風が火照った頬に心地よい。
「まったく、あなたは少し黙っているということができないのですか……」
「え? 俺、なんかしたか?」
「はぁ……。まあ、おかげで公爵の腹心と話す時間は稼げましたが」
セラフィーナは呆れつつも、どこか楽しそうだった。護の裏表のない行動は、貴族社会の欺瞞に疲れた彼女にとって、清涼剤のようだったのだ。
「それにしても、ここの貴族の方々は、どうも下世話な方ばかりですわね」
「だよな! なんか、俺の筋肉ばっか見てくるしよ! やっぱモテ期か?」
護は、どこからか持ってきた骨付き肉を頬張りながら、無邪気に笑う。
「あなたは……緊張しないのですか? 相手は、この国でも指折りの権力者たちですよ」
「誰が相手でも、俺、緊張したことねえなぁ。結局、みんな同じ人間だろ? 強いか、弱いか。いい奴か、悪い奴か。それだけだ」
その、あまりにも単純で、しかし本質を突いた言葉に、セラフィーナは思わずふふっと、小さく笑みを漏らした。
その時だった。 テラスの窓ガラス越しに、屋敷の奥から警報音が聞こえてきた。
「今の音は……!」
セラフィーナが表情を引き締める。 そして、彼らを待っていたかのように、テラスの入り口に一人の男が現れた。 整えられた口髭、冷酷な光を宿した瞳。フェルディナント公爵、本人だった。
「ようこそ、白百合の騎士殿。そして……マリーナの英雄殿。今宵の夜会は、楽しんでいただけているかな?」
その笑みは、全てを知っている者の、捕食者の笑みだった。 護たちの潜入は、最初から公爵に筒抜けだったのだ。
「公爵……!」
公爵が指を鳴らすと、テラスの周囲、そして屋根の上から、武装した私兵団が姿を現し、退路を完全に塞いだ。
書斎には、近衛兵たちが殺到し、カゲロウとメルは絶体絶命の窮地に陥る。 テラスでは、護とセラフィーナが包囲される。
「さて、英雄殿。あなたのその規格外の『力』、わたくしの『コレクション』に、ぜひ加えさせて頂きたい」
公爵が、楽しそうに手を広げる。 王城という巨大な鳥籠の中で、仲間たちは分断され、それぞれが最大の危機を迎えた。
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