【14-5】金庫の中の闇
一方その頃。 カゲロウとメルは、公爵邸の裏口から侵入し、広大な屋敷の中を音もなく進んでいた。 警備兵の配置は厳重だったが、カゲロウの潜入技術と、メルの錬金術による解錠技術の前では無意味だった。
「……ここだ。魔力の流れが、この部屋に集まっている」
メルが立ち止まったのは、三階にある公爵の書斎だった。 中に入ると、壁一面に本棚が並んでいる。 カゲロウが床を調べ、メルが魔力探知を行う。
「……それにしても、あの脳筋、ちゃんとやっているだろうか」
メルが作業の手を動かしながら、心配そうに呟く。
「陽動のつもりが、大暴れして作戦を台無しにしそうで、気が気じゃないよ」
「……案ずるな」
カゲロウが、壁の一角を指さしながら答える。
「あいつは馬鹿だが、仲間を危険に晒すような真似はせん。それに……あの女騎士がいる。彼女が手綱を握るだろう。……それより、ここだ」
カゲロウが本棚の一冊を引き抜くと、ゴゴゴ……と低い音を立てて本棚がスライドし、壁に埋め込まれた隠し金庫が現れた。
「ビンゴだ」
メルが取り出した特殊な溶液を鍵穴に垂らすと、複雑な機構が音もなく溶け、扉が開いた。 中に入っていたのは、取引台帳や証拠書類ではなかった。 たった一つ、厳重な魔法結界が施されたガラスケース。その中に、禍々しい紫色の光を放つアンプルが収められていた。
「これは……!」
メルはその液体に見覚えがあった。マリーナで戦ったキメラ、そしてオーガロードから検出された成分と酷似している。だが、濃度が違う。
「この間見たものよりも、色が濃い……! 何より、おぞましい魔力を放っている……! これが、完成品か……!?」
メルがケースに手を伸ばした、その瞬間。
ジジジッ!
「しまっ……魔法警報か!?」
部屋全体に、耳をつんざくような警報音が鳴り響いた。 廊下から、多数の足音が迫ってくる。
「……嵌められたな」
カゲロウが刀の柄に手をかける。 二人は、完全に罠にかかっていた。
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