【12-5】退廃のオークション
護たちがなだれ込むように倉庫の奥へ侵入すると、そこは外の薄汚れた空気とは無縁の、異様な熱気に満ちた空間だった。
倉庫の中央が巨大なホールのように改装され、煌びやかな魔晶石のランプが輝いている。 仮面で顔を隠した貴族、いかにも裕福そうな商人、そして怪しげなローブを纏った魔術師たち。彼らは、ワイングラスを片手に、ステージ上の「商品」を値踏みしていた。 檻の中に入れられているのは、希少な魔物、そして――手足に鎖を繋がれた、亜人の子供たち。
護たちの乱入に、会場は一瞬、水を打ったように静まり返る。 そして次の瞬間、悲鳴と怒号が渦巻く大パニックへと変わった。
「静まりなさい!」
凛とした声が、会場の喧騒を切り裂いた。 セラフィーナが、騎士団の紋章が刻まれた大盾を構え、毅然として前に進み出た。
「我々はエルドラド王家直属、王都騎士団『白百合騎士隊』! この場にて、違法な魔物の売買及び、人身売買の現行犯として、関係者全員を拘束します!」
その宣言は、パニックに陥っていた聴衆に、さらなる混乱を巻き起こした。
「き、騎士団だと!?」
「なぜ、ここが嗅ぎつけられたのだ!」
「早く逃げろ! 顔を見られるな! 捕まれば家がお終いだ!」
仮面をつけた貴族たちは我先にと出口へ殺到し、商人たちは護衛の傭兵に「道を開けろ!」と怒鳴り散らす。
壇上で、その光景を優雅に眺めていた男がいた。 闇市場の主、バロン・フォン・ガイツ。 彼は表情一つ変えず、まるで退屈な芝居に飽きたかのように小さくため息をつくと、隣に控える巨大な人影に合図を送った。
「……お客様方がお逃げになるまでの、ただの時間稼ぎでよろしい。存分に、暴れてきなさい」
「ガハハハ! 了解だ、ボス!」
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