↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/350

【9-4】太陽の約束

護は、黙って聞いていた。 難しい政治の話や、国家間の事情なんてものは、よく分からない。 だが、目の前の女性が本気でメルを心配していること、そしてメルが今、独りぼっちで泣いていることだけは、痛いほど分かった。


「……難しいことは、よく分かんねえ」


護は、あぐらをかいた膝をパンと叩いて立ち上がった。その瞳には、いつもの能天気さはなく、静かで熱い決意の炎が宿っていた。


「けどよ、俺はあいつに言ったんだ。『大丈夫だ、お前のことは俺たちが絶対守る』ってな。男に、二言はねぇよ」


迷いのない、真っ直ぐな言葉。 それは、理屈や損得を超えた、護という人間の根源的な強さだった。


カゲロウもまた、静かに立ち上がり、刀の鯉口を親指で弾いた。


「……そのモルゴーという男が纏う臭いは、俺も知っている。己の欲望のために、他者を踏みにじることを何とも思わない……そういう下衆の臭いだ。俺には、そいつらに返すべき借りがある」


復讐に生き、過去に囚われてきた剣士。彼だからこそ、メルの痛みが分かるのだろう。


二人の覚悟を見たアウレリアは、張り詰めていた糸が切れたように、ふっと表情を和らげた。 その顔に浮かんだのは、涙混じりの、しかし美しい聖母のような微笑みだった。


「……やはり。私の目に、狂いはなかったようですね」


「へ?」


「実は、ギルドからあなた方の話を聞く前から、一度だけ、街であなたを……護さんをお見かけしたことがありました」


アウレリアは、懐かしむように護を見る。


「これだけ永い時を生きてきましたが、あなたほど大きく、そして……温かい気を放つ人間は、見たことがありませんでした。まるで、歩く太陽のようだと……そう、思ったのです」


アウレリアは、護の大きな手に、自分の震える手を重ねた。


「だから、コーラルさんからあなたの話を聞いた時、すぐに『この人なら』と確信いたしました。……どうか、あの子を。メルを、よろしくお願いいたします」


「任せとけって! 必ず連れ戻してくる!」


護はニカっと笑い、アウレリアの手を力強く握り返した。 カゲロウが、玄関の方へと歩き出す。


「……行くぞ、護。夜になる」

「おう! ……あ、そうだアウレリアさん。メルはどこに行ったか分かるか? あいつ、足速いからな」


護の問いに、アウレリアは窓の外、海の方角を指差した。


「あの子が心を乱した時、いつも一人で行く場所があります。港を見下ろせる、西の岬です。そこに、一本だけ大きなクスノキがあります。……きっと、その下にいるはずです」


「西の岬の、クスノキだな! 了解!」


護とカゲロウは、アウレリアに見送られ、夜の帳が下りたマリーナの街へと駆け出した。


護の心の中には、ただ一つの想いがあった。


(メル……)


ただの生意気なガキだと思っていた。 口が悪くて、態度のデカい、天才少年だと。 だが、あいつは背負っていたんだ。俺なんかじゃ想像もつかないくらいの、重くて暗い過去を。


(待ってろよ。俺が……俺たちが、絶対にお前を、その悪夢から救い出してやるからな)


夜風が、二人の背中を押すように吹き抜けた。 本当の冒険は、ここから始まるのだ。

お読みいただきありがとうございます!


もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の【☆】マークから評価や、ブックマーク登録をしていただけると、作者のモチベーションがマッハで上がります! (感想もお待ちしています!)


★更新予定 毎日19時に更新します。ストックはあるつもりなので、安心してお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。