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『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第一章

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【9-1】沈黙の帰路

夕暮れが、世界を茜色と紫のグラデーションに染め上げていく。 マリーナの街へと続く森の道を、三つの影が歩いていた。


行きのような賑やかさは、もうない。 小鳥のさえずりさえも遠慮するような、鉛のごとき重い沈黙が一行を支配していた。


先頭を歩くのはメルだ。 いつもなら護の背中を蹴飛ばしてでも前に出るはずの彼女が、今は俯き、自分の足元だけを見つめて歩いている。その小さな手には、洞窟で見つけた羊皮紙のメモが、くしゃくしゃになるほど固く握りしめられていた。


(……嘘だ)


メルの心の中で、否定の言葉が繰り返し木霊する。


(あんな場所に、あの男の痕跡があるはずがない。あれはボクの悪夢の中だけの存在だ。……なのに、この紋章は。この、吐き気がするほど見覚えのある術式は……!)


彼女の背中は、拒絶と、そして隠しきれない恐怖に震えていた。


「……なぁ、メル」


耐えきれなくなった護が、沈黙を破る。その声は、彼にしては珍しく、腫れ物に触るように慎重だった。


「腹、減ってねえか? 街に戻ったら、なんか美味いもんでも食いに行こうぜ! 甘いもんでもいいぞ!」


護なりの、精一杯の気遣いだった。 しかし、メルは顔を上げることもなく、ただ小さく首を横に振っただけだった。 カゲロウは何も言わない。ただ、いつ敵が襲ってきても対応できるよう、鋭い視線を周囲に巡らせながら、同時にメルの様子からも目を離さずにいた。

お読みいただきありがとうございます!


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