【7-2】未知のダンジョンと護衛の役目
洞窟内に足を踏み入れると、外の暗さとは裏腹に、中はぼんやりと明るかった。壁の至る所に、鉱脈が青白い光を放っており、それが洞窟全体を幻想的に照らし出している。
「すげぇ! なんでこの洞窟、光ってんだ? 魔物の仕業か?」
護が、子供のように目を輝かせて壁に触れようとするのを、メルが呆れたように制した。
「やめろ、脳筋。壁に含まれる『光脈石』が、洞窟内に満ちる魔力に反応して発光しているだけだ。少しは学習したらどうだ?」
「へぇー!」
「それより、今回の目的物『月光苔』について、君はちゃんと理解しているのかい? ただの光る苔だと思ってはいないだろうな?」
護が「なんかすげぇ苔、なんだろ?」と答えると、メルはこれ見よがしに、大きなため息をついてから説明を始めた。
「月光苔は、高純度の魔力が結晶化した場所にのみ生育する、極めて希少な錬金術触媒だ。特に、高位の回復薬や、魔力増幅薬の作成には欠かせない。こんな辺鄙な洞窟まで足を運ぶのは、それだけ価値があるからだ。必然的に、洞窟の最も魔力が濃い場所……つまり、最奥部にあるのさ」
その説明は、護には難しすぎたが、とにかく「すげぇ物」だということは理解できた。
メルの持つ古い文献の知識と、ギルドの情報を元にした的確な案内で、一行は順調に洞窟の奥へと進んでいく。
「この先の分かれ道、右は行き止まりのはずだ。左へ進むぞ」
「この壁の染みは、粘着性のスライムの痕跡だ。踏まないように注意しろ」
メルの指示は的確で、護とカゲロウは、その知識量に内心舌を巻いていた。 しかし、洞窟を進むにつれて、メルは眉をひそめることが多くなった。
「おかしいな……。この辺りに出るはずの魔物はコボルトのはずだが、遭遇したのは凶暴化したストーン・スネークばかりだ。それに、文献では『穏やかな性質』とあったスライムが、やけに攻撃的だった……」
さらに、彼女が持っていた地図が役に立たない場面も出てきた。
「変だ……。ギルドの地質調査記録では、この通路は安定しているはずなのに、新しい落盤の跡がある。まるで、ここ数日の間に、何かが洞窟の生態系を無理やり変えているようだ……」
洞窟の様子が、既知の情報と異なっていることに、一行は次第に警戒を強めていく。
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