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『Transients』〜異世界で筋肉無双してモテたい!〜  作者: NewSankin
第二章

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【55-6】疑似家族の誕生、最高級のポーション

セオドアが気を使い、話し合いのために空き部屋を用意してくれた。


護は、今までの経緯(アイリとの出会い、輝石祭の依頼、下宿先での出来事)を、メルに一から正直に説明した。

メルは、腕を組み、ふくれっ面でため息を吐きながら聞いている。


「……はぁ。そんなことだろうとは思ったけど、まさか輝石祭にまで参加するとはね。君は、本当に面倒事を引き寄せる天才だな」


「うぅ、ごめんメル。ちゃんと相談ぐらいはできたよな……」


護が素直にシュンと謝ると、メルは少し調子が狂ったように視線を逸らした。


「……べ、別に、謝ってほしいわけじゃないけど……。それで? ちゃんと攻略できそうなのかい? その『星砕きの迷宮』とやらは」


護を心配するメルの気持ちが、そのぶっきらぼうな口調に滲み出ている。


「作戦とか謎解きは、アイリちゃんたちがやってくれるみたいだ。戦闘とかは、俺が担当って感じだな」


「……そのアイリって子は、どうなんだい?」


メルが、何気ないふうを装って、曖昧な質問をする。


「どうなの?って、そりゃあ頭は良いんじゃないか? 国が留学させるぐらいだし。あ! 魔道具とか作ってるんだけど、それもすごかったぜ! 『宝箱レーダー』みたいなやつ!」


護が、興奮気味にアイリの才能を語る。


「(少しイラっとしながら)そう言うんじゃなくて……その……まぁ、いい」


メルは、女として的な意味での「どうなんだ(どういう関係なんだ)」というニュアンスが護に伝わらないことを悟り、ため息をついた。


護は「?」と首を傾げながらも、メルの側で丸くなって休んでいるカーバンクルに気づく。


「そいつ、メルに随分懐いてるな」


護が、カーバンクルの頭を優しく撫でる。


「え? あ、ああ。何度か森に返そうとしたんだけど、帰らなくてね。結局、ボクについてきちゃうから、このまま面倒をみようかと思うんだ。ダメ……かな?」


メルが、少し不安そうに上目遣いで護の顔を伺う。


「良いんじゃねぇか? メルに懐いてるみたいだしさ。こいつも一人は寂しいだろうし」


護の言葉に、メルは嬉しそうに微笑んだ。


「そういえば、こいつに名前はつけたのか? これから一緒にいるんだったら、名前つけないと!」


「(ハッとして)そうだね、名前はつけないとね。護は、何か良い案あるかい?」


「うーん、そうだな……『シロ』とか、『タマ』とか! あと、俺の技から取って『マッスル』とかどうだ!」


「(呆れて)……君のネーミングセンスの無さには、心底がっかりだよ。そんな名前、絶対につけない」


メルは、真剣な顔で少し考えた後、カーバンクルの額の月光石を見つめる。


「……『アルバス』……なんてどうかな? 古代語で『白』とか『光』って意味だ」


カーバンクルは、その名前を聞いた瞬間に「きゅい!」と嬉しそうに鳴き、メルの頬にスリスリと頬擦りした。


「お! そいつもそれが良いみたいだな! アルバスか、カッコいいじゃねえか! ……ということは、メルは名付け親、つまり『お母さん』になったんだな!」


「お、お母さんって……! な、何を馬鹿なことを……! じゃあ、誰がお父さんなんだい……!」


メルが、顔を真っ赤にして思わずツッコミを入れる。

その言葉を聞くと、アルバス(カーバンクル)が、メルの膝からぴょんと飛び降り、護の肩に飛び乗った。そして、護の頬にスリスリと頬擦りする。


「お! なんだぁ〜、俺がお父さんってか? ハハハ!」


護は、楽しそうにアルバスを撫でる。


「つーことは、メルがお母さんで、俺がお父さんだな! アルバス、よろしくな!」


護が、何の気なしにそう言った瞬間。


「っは! はぁ!? な、な、な、何を言ってるんだ、この大馬鹿者!!」


メルは、顔を茹でダコのように真っ赤にして、完全にフリーズしてしまった。


護は、壁に立てかけてある時計を見て、「お! そろそろ戻らないと! アイリちゃんたち、待たせてるだろうし」と言い立ち上がる。


「じゃあ、メル! 行ってくる! 実験、頑張れよな!」


護が部屋を出ていこうとすると、メルは、まだ顔が真っ赤な状態からなんとか立ち直り、護の背中を呼び止めた。


「護!」

「ん? どうした?」


メルは、護の目を真っ直ぐに見つめる。


「……ちゃんと、無事に戻ってくるって、約束して」


護は、その真剣な眼差しを受け止め、ニカっと太陽のような笑顔を見せると、メルの小指に自分の太い小指を結んだ。


「ゆびきりげんまんだ! 絶対、無事に戻ってくる!」


「(顔を赤らめながら)……ちょっと待って!」


メルは、懐から一本のポーションを取り出し、護に渡す。

それは例のピンク色の筋肉増強剤(失敗作)ではなく、透き通るような青色をした、最高純度の回復薬だった。


「コレ、ボクが作った最高級のポーションだ。万が一の時に使うといい」


「マジで! ありがとうメル! 助かるぜ!」


護は、ポーションを大切にポーチへしまうと、今度こそ部屋を出ていった。


一人残されたメルは、まだ熱い自分の頬を両手で押さえながら、小さく呟く。


「……本当に、大馬鹿者なんだから……お父さんって……」


その声は、怒っているようで、どこか嬉しそうだった。

お読みいただきありがとうございます!


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