【55-6】疑似家族の誕生、最高級のポーション
セオドアが気を使い、話し合いのために空き部屋を用意してくれた。
護は、今までの経緯(アイリとの出会い、輝石祭の依頼、下宿先での出来事)を、メルに一から正直に説明した。
メルは、腕を組み、ふくれっ面でため息を吐きながら聞いている。
「……はぁ。そんなことだろうとは思ったけど、まさか輝石祭にまで参加するとはね。君は、本当に面倒事を引き寄せる天才だな」
「うぅ、ごめんメル。ちゃんと相談ぐらいはできたよな……」
護が素直にシュンと謝ると、メルは少し調子が狂ったように視線を逸らした。
「……べ、別に、謝ってほしいわけじゃないけど……。それで? ちゃんと攻略できそうなのかい? その『星砕きの迷宮』とやらは」
護を心配するメルの気持ちが、そのぶっきらぼうな口調に滲み出ている。
「作戦とか謎解きは、アイリちゃんたちがやってくれるみたいだ。戦闘とかは、俺が担当って感じだな」
「……そのアイリって子は、どうなんだい?」
メルが、何気ないふうを装って、曖昧な質問をする。
「どうなの?って、そりゃあ頭は良いんじゃないか? 国が留学させるぐらいだし。あ! 魔道具とか作ってるんだけど、それもすごかったぜ! 『宝箱レーダー』みたいなやつ!」
護が、興奮気味にアイリの才能を語る。
「(少しイラっとしながら)そう言うんじゃなくて……その……まぁ、いい」
メルは、女として的な意味での「どうなんだ(どういう関係なんだ)」というニュアンスが護に伝わらないことを悟り、ため息をついた。
護は「?」と首を傾げながらも、メルの側で丸くなって休んでいるカーバンクルに気づく。
「そいつ、メルに随分懐いてるな」
護が、カーバンクルの頭を優しく撫でる。
「え? あ、ああ。何度か森に返そうとしたんだけど、帰らなくてね。結局、ボクについてきちゃうから、このまま面倒をみようかと思うんだ。ダメ……かな?」
メルが、少し不安そうに上目遣いで護の顔を伺う。
「良いんじゃねぇか? メルに懐いてるみたいだしさ。こいつも一人は寂しいだろうし」
護の言葉に、メルは嬉しそうに微笑んだ。
「そういえば、こいつに名前はつけたのか? これから一緒にいるんだったら、名前つけないと!」
「(ハッとして)そうだね、名前はつけないとね。護は、何か良い案あるかい?」
「うーん、そうだな……『シロ』とか、『タマ』とか! あと、俺の技から取って『マッスル』とかどうだ!」
「(呆れて)……君のネーミングセンスの無さには、心底がっかりだよ。そんな名前、絶対につけない」
メルは、真剣な顔で少し考えた後、カーバンクルの額の月光石を見つめる。
「……『アルバス』……なんてどうかな? 古代語で『白』とか『光』って意味だ」
カーバンクルは、その名前を聞いた瞬間に「きゅい!」と嬉しそうに鳴き、メルの頬にスリスリと頬擦りした。
「お! そいつもそれが良いみたいだな! アルバスか、カッコいいじゃねえか! ……ということは、メルは名付け親、つまり『お母さん』になったんだな!」
「お、お母さんって……! な、何を馬鹿なことを……! じゃあ、誰がお父さんなんだい……!」
メルが、顔を真っ赤にして思わずツッコミを入れる。
その言葉を聞くと、アルバス(カーバンクル)が、メルの膝からぴょんと飛び降り、護の肩に飛び乗った。そして、護の頬にスリスリと頬擦りする。
「お! なんだぁ〜、俺がお父さんってか? ハハハ!」
護は、楽しそうにアルバスを撫でる。
「つーことは、メルがお母さんで、俺がお父さんだな! アルバス、よろしくな!」
護が、何の気なしにそう言った瞬間。
「っは! はぁ!? な、な、な、何を言ってるんだ、この大馬鹿者!!」
メルは、顔を茹でダコのように真っ赤にして、完全にフリーズしてしまった。
護は、壁に立てかけてある時計を見て、「お! そろそろ戻らないと! アイリちゃんたち、待たせてるだろうし」と言い立ち上がる。
「じゃあ、メル! 行ってくる! 実験、頑張れよな!」
護が部屋を出ていこうとすると、メルは、まだ顔が真っ赤な状態からなんとか立ち直り、護の背中を呼び止めた。
「護!」
「ん? どうした?」
メルは、護の目を真っ直ぐに見つめる。
「……ちゃんと、無事に戻ってくるって、約束して」
護は、その真剣な眼差しを受け止め、ニカっと太陽のような笑顔を見せると、メルの小指に自分の太い小指を結んだ。
「ゆびきりげんまんだ! 絶対、無事に戻ってくる!」
「(顔を赤らめながら)……ちょっと待って!」
メルは、懐から一本のポーションを取り出し、護に渡す。
それは例のピンク色の筋肉増強剤(失敗作)ではなく、透き通るような青色をした、最高純度の回復薬だった。
「コレ、ボクが作った最高級のポーションだ。万が一の時に使うといい」
「マジで! ありがとうメル! 助かるぜ!」
護は、ポーションを大切にポーチへしまうと、今度こそ部屋を出ていった。
一人残されたメルは、まだ熱い自分の頬を両手で押さえながら、小さく呟く。
「……本当に、大馬鹿者なんだから……お父さんって……」
その声は、怒っているようで、どこか嬉しそうだった。
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