【55-5】愛の(?)ジャンピングアッパー
実験が一段落し、メルがふと実験室の端に目をやった瞬間。
彼女の青い瞳が、限界まで見開かれた。
「……は?」
それを見た研究者たちも、メルの目線の先にいる護と、その隣のセオドアに気づき、慌てて敬礼する。
「こ、公爵閣下! いつの間に……!」
護は、そんな空気も読まず、「お〜い!」と元気に手を振った。
「よぉ! メル! お疲れさん! なんか、すげえカッコよかったぜ!」
メルは、研究者たちをかき分け、護の元へズンズンと歩み寄る。
その顔は、沸騰しそうなほど真っ赤だ。
護は、呑気にメルを労うが、メルは護の目の前で仁王立ちになると、ギリッと歯を食いしばり――。
「何が『お疲れさん』だ、この大馬鹿者ォォォ!!!!」
ドゴォッ!!
メルの、華奢な体からは想像もつかない渾身のジャンピングアッパーが、護の顎にクリーンヒットした。
「ぐふぉっ!?」
不意打ちを食らった護は、もろに攻撃を受け、大木が倒れるように無様に床に倒れ込む。
メルは、倒れ込んだ護の分厚い胸板に馬乗りになり、その胸ぐらを両手でガシッと掴んだ。
「脳筋! 病院を抜け出したってなんだ! 依頼ってなんだ! 女子留学生ってなんだ! 一つ屋根の下ってなんだ! 全部説明しろぉぉぉっ!!」
メルは、護の胸ぐらを掴み、子供のようにグワングワンと揺らしながら激昂する。
それは怒りもあるが、嫉妬と心配がないまぜになった激しい感情の爆発だった。
「ちょ、メル! 落ち着けって! いてて! 首がちぎれる!」
研究者たちは、自分たちの「希望の星」である天才錬金術師の、あまりにも子供っぽい(しかし、恐ろしく強い)姿に、呆然として口をパクパクさせている。
セオドアは、苦笑いを浮かべながら、研究者たちに指示を出した。
「(咳払い)……みんな、今日は解散だ。続きは明日にしよう」
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