【55-4】天才の指揮と、再会
「護殿の要件は、私に時間を作って欲しいだけで大丈夫かね?」
「おう、そんだけだな! ありがとうな! おっちゃん!」
護が帰ろうとするのを、セオドアが引き留める。
「せっかくだから、メル君のところに顔を覗かせてみないか?
彼女は今、この国の錬金術師たちの希望の星だよ。
ちょうど今、モルゴーが残した手記から有用そうな錬金術の再現実験を行うところなんだ」
「へぇ〜、メルがそんなことやってるんだ! 行ってみようかな!」
セオドアが、護を研究所の最深部にある特別実験室(モルゴーが使っていたラボを、セオドアが管理・浄化したもの)へと案内する。
「護殿、依頼の方はどうなんだね? 部下からの報告だと、聖マギア総合学園の『星砕きの迷宮』に参加すると聞いたが」
「おう! 結構難しいダンジョンらしいんだけど、絶対に攻略してみせるぜ!」
「護殿以外が言ったら、ただの無謀だと笑い飛ばしただろう。だが、キメラ・プライムを倒した君なら、学園のダンジョンなど、赤子の手をひねるようなものかもしれんがね」
セオドアは、護に全幅の信頼を寄せているようだった。
実験室の前に着く。扉の前には、厳重なセキュリティが施され、屈強な衛兵が立っている。
「さ、ここが彼女の新しい実験室だよ」
実験室に入ると、そこは熱気に満ちていた。
何人もの白衣の研究者たち(セオドアが集めた、マギア共和国のトップクラスの錬金術師たち)が、皆、忙しなく動いている。
その中心で、メルが、普段の無骨なローブ姿で、自分よりも遥かに年上の研究者たちに的確な指示を飛ばしていた。
「そこ! 魔力循環の圧力が不安定だ! すぐに安定剤を投入しろ!」
「第二フラスコの温度が3度高い! 微調整を怠るな!」
「違う! その触媒の投入タイミングは、今じゃない! 文献の数値を鵜呑みにするな、素材の個体差を読め!」
メルと研究者たちは、護とセオドアに気付いた様子はなく、実験に集中している。
メルが錬金術台の前に立ち、自らも複雑な錬成陣を起動させる。
その手つきは、一切の迷いがなく、流れるように美しい。
研究者たちが感嘆の声をあげる。
「すごい……! あのモルゴーの理論を、こうも完璧に再現し、さらに安全性を高めて改良するとは……!」
「ああ、彼女こそ、アウレリア殿の、いや、この国の至宝だ……!」
錬金術台の前には、美しい宝石のようなもの(モルゴーの研究を応用した、高純度の魔力結晶)が錬成されていた。
メルは、額の汗を拭い、小さく息を吐いた。
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