【5-4】小さな賢者、メル
護は、アウレリアの美しさに見とれて、話の内容の半分も頭に入っていなかったが、「任せとけ!」と力強く頷いた。カゲロウは、何も答えなかったが、それもまた肯定と受け取られた。 アウレリアは満足そうに頷くと、部屋の奥に向かって声をかけた。
「メル! お入りなさい。あなたの護衛役の方々がお見えになりましたよ」
やがて、奥の扉から、一人の少年(?)が姿を現した。 ブカブカの、師匠のお下がりと思しきローブ。顔の半分を隠すほどに大きな丸眼鏡。そして、腕を組み、ふんぞり返るその姿は、およそ子供らしい愛嬌とは無縁だった。 少年(?)――メルは、護とカゲロウを、値踏みするように下から上までじろりと見上げた。そして、心底がっかりしたように、大きなため息をついた。
「この人たちが、ボクの護衛? 師匠、本気ですか?」
その声は、見た目に反して理知的で、そして、とてつもなく生意気だった。
「一人は、脳みそまで筋肉で満たされていそうな脳筋。もう一人は、影が薄すぎて、いるのかいないのかも分からない根暗。これでは、どちらが護衛なんだか分かりませんね」
メルは、ふん、と鼻を鳴らした。
「まあ、いいでしょう。ボクは天才ですから。ボクの頭脳があれば、どんな危険も乗り越えられます。君たちは、せいぜいボクの指示通りに動く『壁』と『剣』の役目を果たしてください。いいですね?」
その尊大な態度に、護の額に青筋が浮かぶ。
「な、なんだと、このクソガキ……!」
「おや、図星を突かれて怒ったんですか? 単純ですね」
一触即発の空気が流れる中、カゲロウは壁に寄りかかったまま、一切の興味を示さない。 アウレリアは、その様子を見て、楽しそうに微笑んでいた。
こうして、規格外の肉体を持つ脳筋戦士、孤高を気取る天才剣士、そして、神をも恐れぬ生意気な天才錬金術師(?)という、あまりにも歪で、アンバランスな即席パーティーが、波乱の幕開けを迎えるのだった。
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