【4-5】共闘、そして……
西の街道は、地獄と化していた。護は無数の魔物を相手に、文字通り孤軍奮闘していた。ゴブリンを薙ぎ払い、オークを叩き潰し、すでに半分ほどの雑魚を蹴散らしていたが、彼の体もまた傷だらけだった。 戦斧『岩砕き』の重さが、疲労した腕にずっしりと響く。 その時、群れの奥から、ひときわ巨大な影が躍り出た。それは、ライオンの頭、ドラゴンの翼、蛇の尾を併せ持つ、悪夢の具現。合成獣だった。 キメラは、他の雑魚には目もくれず、護めがけて突進する。その爪は鋼を切り裂き、翼が生む突風は人の体を容易く吹き飛ばす。
「ぐっ……!」
護の人間離れしたパワーをもってしても、速さと多彩な攻撃を併せ持つキメラには苦戦を強いられた。じりじりと追い詰められる護。
「(こいつ、ヤベェ……! だが、退かねぇ……!)」
絶体絶命。キメラの口から放たれた灼熱のブレスを、戦斧でかろうじて受け止めた、その時だった。 一陣の風が吹き抜け、キメラの翼の付け根から鮮血が迸る。
「……チッ、間に合ったか。世話の焼ける奴だ」
そこに立っていたのは、刀を抜いたカゲロウだった。
「カゲロウ! 来てくれたのか!」
「勘違いするな。貴様の馬鹿さ加減に付き合ってやるだけだ。……行くぞ」
二人の息は、初めて組んだとは思えないほど噛み合っていた。しかし、それでもキメラは強かった。カゲロウの神速の斬撃は、キメラの硬い鱗に阻まれ、決定打にならない。逆に、翼から放たれる風の刃がカゲロウの頬を掠め、蛇の尾から放たれる毒液が地面を溶かす。
「くそっ……!」
カゲロウが、ブレスを避けきれずに肩を焼かれ、体勢を崩した。そこへ、キメラの爪が迫る。
「させっかよ!」
護が間に割って入り、爪を弾き返すが、彼の防具にも深い傷が刻まれた。
「おい、脳筋! このままじゃジリ貧だ! どうにかして、一瞬でいい、やつの動きを止めろ! 俺が斬る!」
カゲロウが叫ぶ。
「任せろ!」
護は嬉しそうにニカっと笑った。
(馬鹿なやつだ……こんな時でも嬉しそうにしやがって。……だが、頼もしくもある)
護は回避を捨て、キメラの懐に飛び込むと、その巨大な顎が食いつくのを、自らの戦斧『岩砕き』で受け止め、牙を噛み合わせた。
「うおおおおおっ!」
護の全身の筋肉が、限界を超えて軋む。しかし、彼はキメラの動きを、確かに止めていた。
「カゲロウ、今だ!」
護が叫ぶ。カゲロウは、その信頼に満ちた声に応える。納刀し、神速の居合の構えを取る。
「《無明・刹那一閃》」
閃光が走り、キメラの巨体が硬直する。そして、胸に刻まれた一筋の斬撃痕から血を噴き出し、どう、と地に倒れ伏した。まだ息はあったが、完全に戦闘不能だった。
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