【3-2】孤高という壁
それから三日間、護は考えうる限りの手を尽くした。掲示板に貼った札に反応はゼロ。ならばと、ギルドにいる冒険者たちに片っ端から声をかけて回った。
「よぉ! 俺とパーティー組まねえか!? 俺、強いぜ! オーガロードもぶっ飛ばしたんだ!」
しかし、護の規格外の体躯と、オーガロードを単独で討伐したという、もはや伝説と化した武勇伝は、逆に他の冒険者たちを萎縮させてしまっていた。
「いや、俺たちじゃ、あんたの足手まといになるだけだ……」
「そんなことねぇって! 俺がみんなを守るから大丈夫だぜ! ってか、お前ら、なんでそんなに俺から逃げるんだ?」
誰もがそう言って、尻込みしてしまう。
「じゃあ、やっぱり美少女だ! 美少女なら、俺の筋肉の魅力に気づいてくれるはずだ!」
護はターゲットを切り替え、街で見かけた可愛い女の子に積極的に声をかけた。まずは、ギルドで熱心に魔導書を読んでいたエルフの魔法使いに。
「そこのお嬢さん! 俺、磐座護っていうんだ! 仲間を探してるんだけど、君の魔法、すげぇ綺麗だな! よかったら、俺とパーティーを組まないか!? 俺が君の護衛になるぜ!」
エルフの女性は、本から顔を上げ、護の筋肉質な巨体を値踏みするように一瞥すると、静かに首を横に振った。
「申し訳ありません。わたくしの探求には、もっと……繊細なアプローチが必要ですので。ご武運を」
「えーっ!? 繊細なアプローチってなんだよ!? ってか、なんで逃げるんだ!? 俺、何か悪いことしたか!?」
そう言って、彼女は人混みの方へ去っていってしまった。 次に、屋根の上を猫のように軽やかに飛び回っていた獣人の斥候に。
「すごい身軽だな、お嬢さん! 俺にはない才能だ! 俺と組めば、最強のパーティーになれるぜ! 君の素早さと俺の筋肉があれば、どんな敵もぶっ飛ばせる!」
猫耳の少女は、護の姿を認めた瞬間、尻尾の毛をぶわっと逆立て、文字通り猫のような俊敏さで路地裏の闇に消えていった。 結果は惨敗。その威圧感と、どこかズレたアプローチが原因で、ことごとく敬遠されてしまった。 三日後、護はすっかり落ち込んで、マリーナの街をとぼとぼと歩いていた。
「なんでだーっ! 強くて、優しくて、仲間思い! 完璧なリーダーのはずなのに、なんで誰も仲間になってくれねえんだ……! 美少女どころか、誰一人として相手にしてくれないなんて……俺、もしかして嫌われてるのか……?」
夕暮れの路地裏。護がため息をつきながら歩いていると、数人のチンピラが、一人の男に絡んでいるのが目に入った。男は黒を基調とした浪人風の着流しをまとっている。その佇まいは、明らかに堅気ではなかった。
「(またチンピラか……懲りない奴らだな。よし、今度こそ俺が……ってか、あの兄ちゃん、大丈夫か?)」
護が助けに入ろうと一歩踏み出した、その時だった。剣士は、心底面倒くさそうに、ただ一言だけ呟いた。
「……目障りだ」
ヒュッ、と空気が鳴った。 次の瞬間、神速の居合が一閃し、チンピラたちは声も出さずに一瞬で気を失い、崩れ落ちていた。
「(すげぇ……なんだ今の剣……!? 力じゃない……技だ! あれが、本物の剣技か! ヤベェ、俺、感動したぜ!)」
力ではない、極限まで磨き上げられた『技』。護は、自分にはないその力に、感動に打ち震えながら、剣士に駆け寄った。
「すげぇ……! あんた、めちゃくちゃ強いな! 頼む、俺の仲間になってくれ! 俺のパーティーに、あんたみたいな強い奴が絶対に必要なんだ!」
護の直感が、雷のように脳天を貫いていた。こいつこそ、俺のパーティーに絶対に必要だ、と。 しかし、剣士はそんな護を一瞥すると、冷たく言い放った。
「……断る。馴れ合うつもりはない」
「えーっ!? なんでだよ!? 頼むよ! 俺、あんたのこと絶対裏切らねえから!」
そう言って背を向け、去ろうとする。彼は一度も、自分の名を名乗ろうとはしなかった。
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