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【第三部完結】灰に至るまで  作者: からん
番外編 血肉の檻
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間話 アロガンテッソ

 寒風が容赦なく通り抜けてくる小屋。


 アロガンテッソは目を閉じたまま座り込んで、なんとか淀んだ思考をかきまわす。


 すこしずつ、窓越しに空の青が滲んでくる。


 夜明けだ。


 あの男が言う、城門棟に戻るべき時間である。


 しかし……。


 隣では弟子のララが昏睡状態で、いまもうなされている。


 加えて弟子二人にたんまりと持たせた資料と、なんとしても一体は持ち帰りたい死骸。


 研究のために引き続きここに留まるか、それとも弟子も捨てておめおめ逃げ帰るか。


 アロガンテッソはそういった選択に苛まれていた。


 いや、そもそも自分ひとりでは城門棟には戻れないだろう。


 案内役がいなければ地図もわからないうえに、いまの状態だと無詠唱魔法を使うほどの精神力もない。


 さまよっている異形に食われるのが落ちだ。


「はぁ……」


 アロガンテッソはため息を漏らした。


 もしかして、ヒャーナの言葉の通りはやめに撤退したほうがいいのではないか。


 そういう迷いが混じっているため息だ。


 学問の探究は、つねに一歩進んだところにある。


 困難と危険を恐れていては、真に価値ある研究はできない。


 アロガンテッソは金も名誉もあまり興味はない。


 ただ異形にもたらされた厄介な病を研究するため、わざわざこんな辺鄙な場所にきた。


 でも、結局のところ、自分はあのいけ好かない賞金稼ぎとも大して変わらないと思った。


 アロガンテッソは別に人間のためなど大それた精神はない。ただ研究が、魔法が好きなのだ。自分が持つ知識を誇りに思うし、何か成し遂げるたびに満足する。もし神官たちの治療術でさえ解決できないものを突き止めて、魔法の有用性を証明できれば、きっと……


 でも、いまでは何かを成そうという気力も精神力もない。


 寒風に晒されている部屋に縮こまって、宮廷魔法使いの思考がまとまらないうちに、ただ時間が意味もなく、過ぎていく。

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