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【第三部完結】灰に至るまで  作者: からん
第二部 英雄の逝く町にて
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間話 夢

 少女は夢を見た。


 故郷を離れて以来、繰り返し見ていた夢。


 銀色の半月が夜空に上がって、緩やかな光が窓から差し込んでくる。


 自室のベッドに座り、少女は昔のドレス姿のまま、半魔のメイドに語りかける。


「リサ、今日はね。ようやく荷物を見つけましたの」


「自称案内人、ミゲルと言う人だけど、お金のために荷物を盗んだんですって」


「まさか地下に連れて行かれるとは思いもよりませんでした。ちょっと怖い場所でした」


「あそこのボス、デミカス。ああいうグイグイ来るタイプの人間は初めて会いました」


「同席している中には東の人間もいましたよ。なんか、外見は私たちとそっくりで、ちょっと意匠の違う制服を着込んでいるけれど、雰囲気は軍のみんなと似ていました」


「それから会話の渦に巻き込まれて、正直私ではとても対応しきれなくて……結局、荷物を返してもらえませんでした」


「それで、師匠に助けを求めようと商館のほうに行くことにしました」


「ウリウス会長。とても綺麗な方でしたよ。それに、師匠以外の不死者とも初めて会いました。でも、結局彼女も同じ言い含んだ言い方をします。は~商人とはみなああいう感じでしょうか。正直別の意味で困りました」


「それから……そうですね」


「ミゲルと再会して、今度町を案内してもらうことになりました」


「でもその時、空から異形から降ってきまして……なんとか撃退したけれど、髪がね……ほら、まさかこんなに白くなるとは」


 褐色の肌のメイドに、少女は髪をかき上げてみせる。


 元々横に集中した白さは、いまや全体に散りばめられて、見え隠れする。


「ただでさえハルトマン家の人間だと名乗れないのに、これでは本当のことを言っても信じてもらえないかもしれませんね」


 若干の自嘲混じりに、少女は苦笑する。


 月明かりに照らされたメイドの頬に、柔らかい微笑みが刻まれている。


 いつも仏頂面を貫くメイドがこんなふうに笑うのは、この夢の中だけだ。


 だから、少女もここが夢だと分かる。


「リサ、私は、ほんとうに正しいことをしているでしょうか」


 繰り返しみる夢だ。


 そして少女は決まった質問を、またしても口にしてしまう。


「リサ……私は、ほんとうに正しいことをしているのでしょうか」


 答えは返ってこない。


 メイドは柔らかい表情で少女を見つめて、ただ微笑んでいた。


 涙が頬に伝わって、視界がぼやける。それでも必死にメイドの姿を確かめようと、少女は縋るように……口からまたしても同じ質問を絞り出す。


 メイドは、やはり何も答えてくれなかった。

 


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