第25話 後悔
トリアは深く後悔していた。
底の見えない渦に囚われたように、ずっしりと心が捩られていく。
負傷した守備軍たちに治療を施した。迷える信者の前で背伸びしてなんとか安心させた。なのに、肝心なところで中途半端な選択をしてしまった。あの日、不死者の存在に気づいた日からもっと果敢に行動していれば、こうはならなかったと、トリアには思ってならなかった。
故郷が滅んだ時の記憶。成長するにつれ不鮮明になったそれが、不鮮明になったまま、しかし頭の奥底に曖昧な恐怖となって精神を蝕んだ。
あの日、分不相応にもブッソラ司祭が残した錫杖を継いだ瞬間、トリアは即座に不死者の気配を感じ取った。
トリアは理解している。
不死者より、いまは第一次防衛戦を一日でも長く持ちこたえさせることが大事だと。ブッソラ司祭ならとっくに錫杖で不死者の存在を知っていたはずで、そのうえで決断をくだした。
――聖王庁直属の異端討伐隊として、目の前の異形を優先する。
しかし、不死者の弟に滅ぼされた故郷を思い返すと、トリアはその遺志を継ぐことはどうしてもできなかった。大きな葛藤が少女の華奢な身体にのしかかって、戦線が崩壊寸前のストレスもあり、トリアは一人になるといつもこっそり泣いていた。
結局、最終防衛戦線が展開してから気持ちを抑えきれず、ファルミに助言を求めた。
一人で異形を何時間も防いだ警備隊長は一ミリも迷わなかった。不死者は人類にとっての大敵。こういう時こそ内部の混乱をさきに処分すべき。はっきりと、ファルミはトリアに言った、最終防衛術式を維持するための人数さえ残っていれば、自分たちの命は何も惜しくない、と。
トリアはファルミの気持ちに気づいている。それで彼の判断を混乱させているとも思い至った。それでも……トリアは拒まなかった。
優しい言葉に甘えて、心のどこかで期待していた。
次の日に必ず不死者は突き止められる。
しかし、辿り着いた先にあるのは……何もかも焼き払われ、壊滅的な最後。




