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第22話 涙
朝。
曇天が発する暗澹な光が廊下を照らす頃、クリシスは呆然と佇んでいた。
目覚めてから書斎の惨状に気づき、部屋を飛び出してきた少女はすぐ彼女が最も信頼をおくメイドを見つけた。
相変わらず息が漏れそうな精緻な顔立ちをして、見ていると穏やかな気分になる。小麦色の肌に、薄いピンク色の唇。長いまつげは息に当たって震え……しかし頬に触れてみて、なぜか冷たい感触だけが掌に残る。
抱きつくと、いつもの柔らかさがなく、代わりに肉が爛れた異臭が鼻を燻った。
クリシスはその抜け殻を、力強く抱きしめた。
なにも考えていないはずなのに、涙がボロボロと頬に伝わって落ちた。次第に声を荒げて、堰を切ったかのように途方に暮れた気持ちが滂沱と溢れ出る。
――リサまで死んでしまった。
氷漬けにされた廊下に、クリシスの泣き声はとてもとても長い時間、自分の耳を苛み続けた。




