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Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第三章 鋼鉄の越境者(スティール アウトサイダー)
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メリッサ救出作戦

「正面から、こちらへと接近する騎馬を確認! 数は一! どうやら、友軍ではない模様!」

 

 突如として響き渡る野太い声の警報に、塔屋で仮眠を取っていた警備隊の隊長は、ハッとして微睡(まどろ)みから覚醒した。

 慌てて外の歩廊へと出た彼は、発声をした警備兵の指し示す先へと目を凝らす。

 城門前へと伸びる通りの先には、後方へ朦々(もうもう)とした土埃を上げ、猛烈な速度でこちらへと迫りつつある黒毛の馬が見えた。


 未だ距離があるために判然とはしないが、その背には二つの人影があった。

 見覚えのない馬と、自軍の物と明らかに異なる服装をした二人組に、彼は即座に部下達へと迎撃の準備を発令した。


「敵襲! 敵襲! 警邏(けいら)中の者は正門側の警備兵と合流! それ以外の警備兵は、各自の配置箇所の守りを固め、側面からの攻撃に備えよ! お前は、上へとこの事を伝令! 急げ!」

 

 傍らの兵士を突き飛ばすように報告へ送り出した警備隊長は、周囲へと発破(はっぱ)を掛けつつ迎撃態勢を整える。

 やがて、防衛の準備がようやく終わった頃には、先程まで遥か遠くにあったはずの敵影は、相手の身形(みなり)がはっきりと見て取れるまでに接近していた。

 一陣の風と化して迫る馬は、驚くべき事に、希少種であるユニコーンであった。

 少なくとも、その馬上に(またが)る二人の男が、ただの盗賊や発狂者の(たぐ)いでないのは、火を見るよりも明らかだった。


「全員、構え! 狙いを合わせ、そのまま待機! 発砲はまだ控えろ!」


 事の重大さを肌で感じ取った警備隊長は、声を張り上げ、部下達へと指示を飛ばす。

 彼の朗々とした号令に合わせ、城門上の歩廊へと居並んでいた十数人の兵士達は、(たずさ)えていた長首の鋼骸器(ライフル)の銃口を、それぞれの狭間から一斉に標的へと向けた。


 跳ね橋が上がっている今、正面から城塞都市内に入る方法はない。

 また、相手が何かしらの強引な手に打って出たとしても、それが実を結ぶよりも早く蜂の巣にすれば良いだけだった。

 後は、主人である領主からの下知(げち)を待ち、もしもの時も、異形の武器の性能の程を、実戦において確かめる良い機会になるだろう。


 無謀な突撃を仕掛けてくる正体不明の相手にも、警備隊長はあくまで余裕を保っていた。

 しかし、圧倒的有利の状況に裏打ちされた彼の平静は、次の瞬間視界へと飛び込んできた、敵の振る舞いによって(もろ)くも打ち破られた。


 既に、謎の騎馬は城門の目前へと到っていた。

 と、その馬上で後方に(またが)っていた方の男が、不意に何かを両肩へと掲げる。

 不審に思い目を凝らした警備隊長は、間を置かず、その両眼を愕然として見開く。

 敵の一人が両の手に持っていたのは、以前に彼も演習で目にしていた、強力な爆弾を遠くへと発射する種類の鋼骸器だった。


 直後、我へと返った警備隊長は、集中砲火の命令を迎撃部隊へと発する。興奮に裏返った彼の号令は、意味をもって部下達へと伝わるより僅かに先に、火竜の息吹を思わせる強烈な噴射音によって掻き消された。

 白煙の尾を引いて空を裂いた卵型の弾頭は、後部に生えた四つの安定翼(スタビライザ)をはためかせ、畳まれていた跳ね橋へと同時に着弾する。

 城門を内側から焼く、猛烈な爆風を(ともな)った爆炎に、真下から衝撃で突き上げられた警備兵達は揃って態勢を崩す。

 統制を乱す迎撃部隊の様子を確認したカイトは、手にしていた携帯式対戦闘兵器擲弾発射器(RPG)を両方とも投げ捨て、目の前で揺れるヒルデブレヒトの後頭部へと叫び掛けた。


「今だ、行け! 向こうはひるんでいる、このまま正面突破だ!」

「分かっている! 振り落とされないように、しっかり掴まれ!」


 風音に負けない程に張り上げられた彼の声に、カイトは即座に相手の腰へと腕を回す。

 直後、城壁を囲む空堀の手前へと到っていた黒燕号は、一足にそこを跳び越え、濁った黒煙に(よど)む城門へと跳び込んだ。

 カイトが放った、前に敵の検問所で鹵獲(キャプチャ)していたRPGの弾頭は、格納されていた跳ね橋へと大穴を開けていた。

 (いびつ)な傷口を(さら)すその突破口を、黒燕号は一個の黒い弾丸と化して潜り抜ける。城門の下に敷かれた石畳へと華麗に着地した彼女は、背中に乗る主の指示に従い、その道の先ヘと勢いを弱めることなく駆け続けた。

 

 強引に城塞の中へと突入した彼らは、城門に面していた大通りに添い、彼方(かなた)(そび)え立つ巨大な天守(キープ)を目指す。

 城塞都市の中心に建つそこには、グランドール公がいる可能性が高い。

 寡兵(かへい)による電撃戦(PL)を仕掛けた以上、相手の攻勢が本格的となるよりも早く、急所を迅速に抑える必要がある。となれば、ここは一気加勢に敵の本陣へと迫り、そこにいる敵の頭目(リーダ)を押さえ敵勢力を無力化するのが、カイト達が勝利する最善にして唯一の策だった。


 初めはヒルデブレヒトも難色を示した、今回の敵城塞への強襲作戦は、しかし想定以上の効果を上げていた。

 戒厳令の敷かれていたらしい城内は、一般市民の姿はほとんどなく、警戒中の兵士達がそこかしこに溢れていた。

 だが、突然の爆音に虚を突かれていた彼らは、一様に困惑し、混乱していた。

 なので、眼前を物凄い速さで駆け抜けていく黒い騎馬にも、それが急襲者であると気付いて攻撃を加える暇もなく、素直に相手を通過させてしまっていた。


 やがて、敵襲を告げる鐘の音が鳴り響く頃には、敵側も状況を把握し、態勢を整えつつあった。

 街路を走る見慣れない馬とその騎乗者に、相手を騒動の原因と見定めた兵士達は、次々とライフルで銃撃を行う。あらゆる方向から浴びせられる弾丸の雨に、ヒルデブレヒトは魔鋼器による電磁結界で、カイトはハンドガンとライフルによる二丁拳銃で、それぞれ対抗した。

 攻防一体となった彼らの反撃に、その行く手に立ち塞がる兵士達は、あえなく次々と打ち倒されていく。

 やがて、(とど)まる所を知らないカイト達の進軍は、家々の密集する地域を突破し、天守へと繋がる幅広の階段の前へと到った。

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