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Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第二章 追憶よりの魔手(アサルト フロム ザ パスト)
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引けない二人

 頬を激情に赤らめ、握り締めた小さな拳をわなわなと震わせていた彼女は、荒く小刻みな足取りで部屋の中へと進み出る。

面食らっていたカイトの前へと詰め寄ると、吊り上げていた細い眉の下から、怒りに燃え盛る眼差しで彼を斜め上から刺し貫いた。


「あんた、何を勝手に取引なんかしてくれてんのよ!? 私は、騎士団か何かに守ってもらうつもりも、力を貸すつもりも、全ッ然、これっぽっちもないから!!」

 

 どうやら彼女は、扉越しに二人の会話を耳にしていたようだった。

 ヒルデブレヒトの申し出を頭ごなしに拒絶する彼女に、カイトは僅かな戸惑いと、多大な疑念を抱いて眉をひそめる。


「おいおい、どうしてそうなる? こいつらの助けがあれば、君も前みたく、いきなり襲われる心配は少なくなるだろ。それどころか、逆にあいつらを返り討ちに出来るかもしれないんだぞ。君だって、自分を狙っているアビゲイルって奴をやっつけたいはずだろ」

「そん…なの、あんたの知った事じゃないでしょ! そもそも私は、あんな奴に関わりたくもないの! あいつらを追い返せれば、それで良いの! ひょっとしてあんた、自分だけじゃそんなのも出来ないとか、情けないことを言い出すんじゃないでしょうね!?」

「契約を結んだ以上、全力は尽くすつもりだ。それでも、いやだからこそ、万全を期しておくのは当然だろう。敵を大本から一網打尽に出来れば、君だってもうこれ以上、ビクビクしながら暮らしていかなくても済むんだぞ。それくらい、君だって気付いて―」

「バカにするなっ、分かってるわよ!! だけど、嫌なものは嫌なの!! あんたは、私の味方で、手下なんでしょ!? だったら、ご主人様の命令に逆らうんじゃないわよ!!」


 どうにか説得を試みるカイトに対し、メリッサは全く聞く耳を持つ様子はなかった。

 もはや金切り声に近い声音となって拒否を続ける彼女に、カイトはあまりの気迫に押されて(ひる)みかける。それでも、大人しく相手の言い分を呑むつもりがないのは、彼もまた同じだった。


 ヒルデブレヒトの発言を信じれば、この一帯の鋼骸器は多くが例の大領主の元にあるという。

 となれば、カイトが最優先で必要としているナノマシン注入器。あわよくば、彼が元いた世界に戻るための時空間転位装置(タイムマシン)の手掛かりも、そこで入手できる可能性は低くはなかった。


 何より、ヒルデブレヒトより話を伝え聞いたカイトは、ある一抹の不安が胸を()ぎっていた。

 杞憂(きゆう)であれば、それに越したことはない。

 しかし、万が一にその予感が的中していれば、事態はヒルデブレヒト達が想定しているよりも、遥かに深刻である。

 だからこそ、例え相手に真っ向から逆らう形になっても、カイトは素直にメリッサの言い付けに従う訳にはいかなかった。

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