真の騎士か、お人好し
メリッサは、家主であるルチアへ事情を説明しに、作業場の方へと下がっていった。
当事者の一人が同席しないのは、事態の全体像を把握する上では、あまり望ましくない。
それでも、打ち解けた会話をどうしても難しくしてしまう、敵対的で刺々しい空気が周りから引いていったのは、カイトにとって喜ばしいのもまた事実だった。
彼女の退室に人心地が付いたのは、ヒルデブレヒトもまた同様らしかった。
溜息と共に肩の緊張を和らげていた彼は、正面に座る相手と視線が合うと、やや気まり悪そうに屈託のない笑みを頬へと刻む。
同じく微苦笑を返したカイトは、ふと、彼が自分に普通の人間と変わらない対応を示しているのに違和感を覚えた。
「お前は、俺を怖がらないのか? 俺は、その、鋼骸種っていう化け物なんだぞ?」
「君は、僕の真意を汲んで、それに誠意をもって応えてくれた。そんな仁義と礼節を弁えた相手を、そういう風に呼ぶのは、僕の主義には反するかな」
「そう、か……こっちの世界の騎士サマは、随分とまた心が広いんだな」
「騎士団で僕が所属している課は、鋼骸種や鋼骸器への対処を主としている。だから、そういったものの相手には、ある程度は慣れているのもあるかもね。とは言っても、人の姿をしていて会話も出来る鋼骸種なんて、流石の僕も今まで見た事も聞いた事もなかったんだけど」
「みたいだな。だが、これでも一応昔は、俺も普通の人間だったんだぜ」
「知っているよ。済まないけど、街角であの彼女に話しているのを、僕も盗み聞きさせてもらっていたから。君が鋼骸種のいる、別の世界から来たというのは、本当なのかい?」
「あそこで言ったことには、嘘はねぇよ。もっとも、この義身以外に証拠は何もないけどな」
カイトの返答を受けたヒルデブレヒトは、難しい顔付きとなって何かを考え込み始める。
やがて、短く強い吐息と合わせて愁眉を開いた彼は、決意のこもった眼差しでカイトの眼を覗き込んだ。
「君に、聞きたい事がある。最近、この地域で起こっている例の鋼骸器絡みの出来事について、何か知っている事や、思い当たる節はないかい?」
「悪いが、そもそも俺はこっち側に来たばかりなんだ。だから、お前の言っている出来事というのが何なのか、分からないんだが……」
「そうだったのか、失礼。じゃあ、まずはその件について、簡単にだけど伝えておこう」




