あまり意味のない自己紹介
自然と二人の間に流れる和解の空気に、それを見て取ったメリッサは慌ててカイトへと駆け寄った。
「ちょっと、なに勝手に仲良くなっちゃってんのよ!? こいつは、アビゲイルの仲間で、私達の敵よ! 絶対に、あれもこっちを油断させる演技! 早く、それでドガンとやっちゃって!」
「待ってくれ、誤解があるようだ。僕は、君達の敵ではない。いや、寧ろ、あの魔女が組している側と敵対しているということは、僕達は同じ側に立っている者同士かもしれない」
カイト達を翳した左手で制したフードの男は、即座にもう片方の手でフードを外す。そこに現れたのは、二十歳前後と思しき、ブロンドの短髪に翡翠色の瞳をした、青年の細面だった。
素顔を露わにした彼は、唐突に襟元を弄り始める。
相手の不審な挙動に、メリッサは急いでカイトの陰へと滑り込む。
怯える彼女を背後に置き、黙したまま成り行きを見守るカイトを前に、やがてその青年は衣服の下から何かを取り出す。細い鎖で彼の首と繋がっているそれは、表面に何か四足の肉食獣らしき絵が彫り込まれた、円形をした薄い銀の胸飾りだった。
言葉もなくその装身具を掲げてみせる相手に、カイトは意図を汲めず眉根を寄せる。
一方、その緻密な銀細工へと目を留めたメリッサは、驚きから大きく息を呑み込んだ。
「えっ、それ、王国騎士団のメダル……!? あんた、まさか―」
「僕の名前は、ヒルデブレヒト・フォン・ブルクヴィンケルン。ナライエ王国アーリヴァン騎士団魔鋼化中隊第三課所属の特務騎兵だ。先程の、僕の浅慮からの無用な戦闘について、改めて謝罪をさせていただきたい。本当に、申し訳なかった」
長々しい肩書きと名前を口にした青年は、神妙な面持ちとなって頭を下げる。
直立の姿勢から深々と礼をする相手を、メリッサは当惑の眼差しで眺める。
そして、そんな二人に挟まれているカイトは、全く会話について行けないまま、今更ながら自分が異世界にいるという事実を苦々しく噛み締めていた。




