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Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第二章 追憶よりの魔手(アサルト フロム ザ パスト)
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通じるもの

 相手との距離が離れた直後、カイトは片手で素早く、銃身のサプレッサーを外していた。

 よって、その発射音は全く緩和されず、元来のものとなっていた。


 周囲の空気を短く震わせる轟音に、メリッサは悲鳴を上げて身を(すく)ませる。

 フードの男もまた、彼女と同様、突然の爆発音に面食らい足を止める。間を置いて棒立ちとなる彼に、カイトは掲げていた腕を下げ、照準(ロック)をその胸へと合わせた。


 フードの男は、相手の持つ鉄器の脅威に気付いているのだろう。

 彼は中腰の姿勢のままカイトを凝視し、その一挙手一投足を油断なく注視していた。


 僅かな間をおいて対峙(たいじ)した二人は、言葉もなく互いの視線で火花を散らす。

 息を殺さざるを得ない沈黙に、その重圧に耐え切れず最初に根を上げたのは、固唾を呑んで成り行きを見守っていたメリッサだった。


「ちょっと、カイト、何してんのよ!? 早くその鋼骸器で、そいつを倒しなさいよ!」


 背後から挙がる彼女の命令に、だが、カイトは従おうとはしなかった。

 突如として現れたフードの男は、確かに自分達を急襲してきた以上、れっきとした敵対勢力(エネミー)であるのだろう。

 しかしながら、先程の交戦の中で、カイトは彼に欠片の殺意もないのを確認していた。


 彼は肉弾戦(インファイト)の最中も、カイトを傷付けるのではなく、あくまで制圧によって無力化しようとしている節があった。

 また、相手の右腰にはコートの裾に隠れる形で、長い得物らしき武器が帯びられていた。

 もし、彼が本当に以前の襲撃者の仲間であるなら、今さら手心を加えてくるはずはない。

 そうした幾つかの違和感が、カイトに引き金(トリガー)を引かせることを躊躇(ためら)わせていたのだった。


そんな、彼の苦悩と逡巡(しゅんじゅん)を察したのだろう。

 苦々しい渋面を作るカイトを前に、陰となっているフードの奥から苦笑の吐息が漏れた。


「なるほど、確かに君は、常人ではないらしいな。鋼骸種であるというのも、頷ける。だが、それでも君はどうやら、道理を(わきま)え、義を介する、(ひい)でた人格の持ち主でもあるようだ」


 フードの男はゆっくりと背筋を伸ばし、起立の姿勢を取る。

 直立した彼は、未だに狙いを定めているカイトへと、微かに顎を引いて目礼した。


 今の彼からは、張り詰めた気配は消え去っている。

 これ以上の継戦を望まない相手の様子に、カイトは安堵の混じった微苦笑を返し、狙いを付けていたハンドガンを下へと降ろした。

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