表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第二章 追憶よりの魔手(アサルト フロム ザ パスト)
41/84

達観と怒り

 カイトが、鋼骸種としての自分が生まれた理由と経緯を語る間、メリッサは一言として口を挟みはしなかった。

 憮然(ぶぜん)としたその表情は、彼の話の内容がほとんど理解できていないことを、ありありと示していた。だが、彼女は不機嫌を露わにしたり、カイトに説明を無理強いしたりはしなかった。


 それまで足元へと彷徨(さまよ)わせていた視線を、メリッサはちらと上げる。

 少し気まずそうな眼差しをカイトへと向けながら、彼女はどこかたどたどしい動きで口を開いた。


「じゃあ、あんたってつまり、本当は普通の人間だったのに、中央ナントカって奴に鋼骸種にされたって訳……? 戦争のせいで、たった一人になったのを、そいつに捕まって……」

「まあ、確かに、父親がいないのも、母さんが死んだのも、戦争に巻き込まれたからかも知れないな。少なくとも、あれさえなければ母さんは、それなりの治療だって受けれただろうしな」

「そんな……そんなのって、ないじゃない! あんたの家族だけじゃなくて、体まで奪うだなんて……中央ナントカって、ホントに最ッ低最ッ悪の、どクズ野朗ね!!」


 はっきりと覚えていない名前を、さも汚らわしそうに吐き捨てたメリッサは、抑え切れない激情を叩きつけるように、地面を(かかと)で強く踏み締める。

 怒りに任せて地団駄(じたんだ)を踏む彼女に、虚を突かれたカイトは思わずたじろぐ。


 何故、メリッサが他人の身の上について、そこまで(いきどお)っているのかは分からない。

 しかし、鼻息も荒く地面を蹴り付ける相手の姿は、まるで自分のために激怒してくれているかのようで、カイトとしても決して悪い気持ちはしなかった。


「ま、確かにあいつらも、そしてあいつらがいた世界も、正真正銘のクソッタレだったろうな。だけど、それでも俺はまだ、どちらかと言えば運が良かった方にはなるかもな」

「はぁ!? あんた、今の話のどこが、運が良かったってのよ!? バッカじゃないの!?」

「そうだな、まずは義身として、この体を与えられた事。もう一つは、この義身だったからこそ、あいつらに出会えた事が、俺にとっての幸運になるのかな」


 人格と精神の破壊としての調教を受けた後、カイトには適正審査の結果を受け、内偵(スパイ)としての任務が与えられた。

 中央政府の内偵は、機械化兵(サイボーグ)であることを悟られないため、ほぼ完全に生身の人間の外観を再現した義身を有していた。

 故にカイトもまた、本来の見た目や年齢とほとんど同じ容姿を模した、潜入工作活動(エスピオナージ)に特化した専用の義身を装着することとなった。


 無論、人間の見た目をした義身が、直接的にカイトを救った訳ではない。

 しかし、その肉体があったからこそ、彼が敵対組織(レジスタンス)への潜入に成功し、そこで彼らと出会うことが出来たのもまた事実だった。

 彼らは、操り人形と化していたカイトに、再び人としての感情と心を呼び起こしてくれた。

 だからこそ、彼は自身の呪縛を解き放ち、自らの運命を決められる一人の人間として、彼らと共に中央政府へと立ち向かっていけたのだった。


「あいつら……? ちょっと、私にも分かるように、ちゃんと説明しなさいよね!」

 

 戦友(とも)達との日々を思い起こして感慨に(ひた)るカイトに、メリッサはイライラとした口調で命令する。目くじらを立てて詰め寄る彼女に、彼は微苦笑(びくしょう)を浮かべ、軽く肩を(すく)めた。


 別にカイトとしても、自分と彼らとの経緯(いきさつ)を話すのは構わない。

 しかし、どうしても長い話になる以上、そのための時間を確保するためにも、まずは新しいナノマシン注入器の発見を優先すべきだった。


 頭上に覗く太陽らしき恒星は、既に午後の角度へと傾いでいる。

 急がなければ、今日中にナノマシン注入器自体どころか、有益な情報さえも得られずに終わってしまいかねなかった。


「まあ、そこら辺の詳しい話については、また今度にでも改めて、な。とりあえず今は、早く街に戻って聞き込みを―」

「いや、僕としても是非、その続きはここですぐに聞かせてもらいたいな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ