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Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第二章 追憶よりの魔手(アサルト フロム ザ パスト)
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種明かし

 後ろを(かえり)みることもなく、一定の歩調を保ち続けていたメリッサは、不意に海とは真逆の方向に伸びる脇道へと足を踏み入れる。

 そこは、ルチアの鍛冶店が面していたのと同じ、住宅地を縫うように敷かれた裏路地だった。


 左右を地の(あら)い煉瓦の壁面で挟まれた細い道を、メリッサは黙々と奥に突き進んでいく。

 重く湿った磯の香りが漂う歩道の脇には、泥臭い水の流れる、幅の広い側溝が横たわっていた。

 暗がりから立ち昇る微かな流水の音に、背後に聞こえていた港の喧騒は、徐々に呑み込まれて小さくなっていく。


 そして、周囲から人々の声と気配が、常人では完全に感知できない程に消え去った頃。

 それまで迷いのない前進を続けていたメリッサが、突然に道の途中で足を止めると、そのまま肩を小刻みに振るわせ始めた。

 不可解な行動を見せる先導者に、カイトは妙な不安を覚えて歩み寄る。

 小走りで近寄ってくる彼に、メリッサは左の(かかと)を軸にし、軽やかな回転(ターン)で後ろを振り向く。

 そこにあったのは、両の頬へと真っ赤な歓喜の朱を差した、だらしなく笑みの形に緩みきった愉悦の表情だった。


 虚を突かれてたじろぐカイトを前に、彼女は光り輝く両目を細め、割れんばかりの大きな笑い声を爆発させた。


「あっはははははははははっ!! ねぇねぇ見た、あいつらの驚いた顔!? こう、口をポカーンと開けて、目なんてクワッてひん剥いちゃってて、もうケッサク!! ミッシェルのやつなんて、私が横を通る時に、ヒイッ、なんてちっちゃく悲鳴まで上げてたのよ! ホント、あの時の今にも泣き出しそうな情けない顔ったら、アハハハッ、何度思い出しても笑えてくるわ!」


 そう言いながら、メリッサは両手で文字通りに腹を抱え、おかしくて(たま)らないといった風に身を(よじ)じらせて笑い転げる。

 激しい発作に襲われる彼女の目には、じんわりと小さな涙の粒さえ浮かんでおり、そこには先程の子ども達を気遣う様子は欠片もない。

 だが、メリッサの相貌(そうぼう)に広がる(きら)めきは、どこまでも純粋で透明だった。

 そして、それはまるで意地悪な友達に仕返しをして喜ぶ、初心(うぶ)な少女そのものの反応に、カイトには感じられた。


 二人以外には誰の目もない暗がりの中、彼女は小さく跳びはねながら感情を爆発させる。

 そんな、普段の気位の高さからは想像もつかない、年相応な女の子らしい振る舞いを見せる相手を、カイトはどこか自分の心も弾むような、不思議な心地で眺めていた。


 カイトが新鮮な驚きをもって見守る中、メリッサはふと真顔に戻り、疑問に満ちた眼差しを彼の方へと上げた。


「そういえば、さっきあいつらの一人が持ってたルルクの実……あんた、あれをどうやって爆発させたの? まさか、本当に爆弾に変えたって訳じゃ―」

「もちろん、違うさ。彼らには悪いが、ちょっとこれで小細工を仕掛けさせてもらったのさ」


 そう言うと、カイトは点となっている彼女の目の前へと、上着の内に隠していた制音装置(アクティブサプレッサー)付きの自動拳銃(ハンドガン)を差し出した。

 それは、彼がルチアの店を後にする際、彼女の作業場から自衛のために持ち出していた物だった。


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