大魔導少女の天敵
「え、ニセ魔女!? ほんとかよ、どこにいんだ!?」
「わっ、本当だ! 誰か、男の人の横に隠れてる! さすがニセ魔女、汚ったなーい!」
少年の呼び声を耳にして引き返してきたその仲間達は、カイトの陰で身を強張らせるメリッサを目に留め、口々に騒ぎ始める。
彼らはいずれも彼女に対し、獲物を見付けたような輝きが宿った眼差しを集め、純朴な悪意に満ちた揶揄と嘲笑を浴びせかけていた。
少年少女達からの罵詈雑言による集中砲火に、メリッサはカイトの上着の生地を強く握り締めた後、彼の陰から勢いをつけて跳び出す。
表へと姿を見せたメリッサに、周囲の幼い嘲りの声は一層に大きさを増す。
より激しくなる罵倒の嵐に、彼女は憤然として腰へと手を置くと、周りの包囲網を怒りに満ちた鋭い眼光で一瞥した。
「うるさいうるさいっ! 嘘ばっか言ってんじゃないわよ、あんた達! 私は、別に逃げても隠れてもないし、それから本物の魔女! いい加減に覚えなさいよ、このバカ!!」
「ウソつきはそっちだろ! こないだだって、魔法を見せるとか言ってて、さっさと逃げ出したじゃないか! 魔法の使えない魔女なんて、魔女じゃないんだぞー!」
「あ、あの時は、用事があって忙しかったのよ! 私くらいの大魔術師になると、数多くの敵からいつも狙われるの! あんた達みたいな小うるさいガキンチョに構ってる暇なんて、これっぽっちもないんだから!」
「まーた、ウソついてるぅ! 本当は、本物の魔女さんの弟子だったけど、全然魔法が使えないから見捨てられたくせに! あたしのお母さんが、そう言ってたもん!」
「―っ、違う、違うわよそんなの! あれは、私の才能がとんでもなく凄いから、あの女が嫉妬して追い出したのよ! やっぱり、嘘つきの親も嘘つきね!」
「じゃあ、今ここでそのスゴイ魔法を使ってみせろよ! お前が魔法使いなら、俺達がビックリするようなことをしてみせるのなんて、簡単だろ!?」
「ぐっ……いや、今日はちょっと少し調子が悪い気がするし、それに、これからどうしても外せない大切な急ぎの予定が―」
「ほーら、やっぱりな! いつもみたいに言い訳して、さっさと逃げるつもりだろ!」
「やーい、逃げるのが得意なだけの、嘘ばっかりのチビのニセ魔女!」
「ニーセ魔女っ! ニーセ魔女っ! ニーセ魔女っ!」
メリッサを小馬鹿にした一人の少年の発言を契機に、周りの子ども達も息を合わせ、彼女の蔑称を連呼し始める。
手拍子を伴った彼らの大合唱に、メリッサは血の気のない形相を更に蒼白とし、両目へと憤怒の炎を燃え盛らせる。
それでも、彼女は降ろした両手を強く握り締め、ただ小刻みに肩を震わせるだけで、何かを言い返すことも具体的な行動を示すこともなかった。




